storyX 『紅の螺旋』(連載中)5/22up

□第8章 忍び寄る影
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ウォーロッドが帰った後、ジェラールの号令の下メンバーたちは教会のバザーの警護についての打ち合わせを始めた。
教会といえば、牧師でもあるリチャードの管轄だ。
「ウォーロッド様のお言葉はまさに愛、デスネ」
「愛なのか?ただの依頼に聞こえたゾ」
ソラノが髪の毛先をくるくると人差し指に巻きつけながら首を傾げた。
「なんでもいいけどよー。王立騎士団が警備に出るほどの規模のバザーともなりゃ、なんかしら起きてもおかしくねぇよな」
ソーヤが隣にいるマクベスに相槌を求めた。
「むしろ起こると仮定して警護をするのが僕らの仕事なんだろ」
「そうだ」
マクベスの問いにジェラールが即答した。
「魔法が使われようが使われまいが、依頼は依頼だ。
出来る限りのことはしたい」
これまでまっとうな仕事などしてこなかった面々だが、すでにヒスイ陛下をはじめ、復興目覚ましいフィオーレへの愛国心すら芽生えはじめていた。
信頼されて、人のために自分の魔法を使う。
それが自分たちが新しく生きる道へつながっていることを実感していたのだ。
もう闇の中でうごめく虫のように生きるのはまっぴらだった。
ジェラールの思いにそれぞれが同意を示してからは、警護の持ち場や方法について活発な意見が交わされることになった。


評議院へ戻ったウォーロッドの元へ、帰りを待っていたかのように訪れたのはかつてこの場所を職場としていた男。
「久しぶりだのう」
「そっちも元気そうだな。安心したぜ。ギヒッ」
「レビィも息災か」
「ああ。実は・・・・・・」
ガジルが誇らしげにあることをウォーロッドに告げようとした時、
「「「「「「ガジル隊長!!おめでとうございます!!」」」」」
評議員時代の部下たちがなだれ込んできた。
どうやらレビィの懐妊をどこからか聞いてきたらしい。
「なっ、お前ら!!」
リリーが頭を掻いた。
「リリー、しゃべっちまったのか」
「すまん、めでたいことなのでつい」
「どういうことじゃ」
「すまねぇ、後回しになっちまったが。
レビィは妊娠してんだ。オレたちに子どもが生まれるんだ」
ガジルが嬉しそうにウォーロッドに告げた。元部下たちから歓声が上がった。
ガジルがVサインを作って見せた。
「しかも、双子だぜ。ギヒッ」
さらなる歓声が評議院の一室に響き渡った。
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