storyX 『紅の螺旋』(連載中)5/22up

□第7章 木と神と供物
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「ところで、今回はちと頼みがあってのう」
「それって依頼か?」
黙って話を聞いていたエリックが口を挟んだ。
どうもまどろこっこしいのは苦手らしい。
「無論報酬も払うが、それほど難しい仕事ではないのじゃ」
「聞かせてください」
ジェラールが依頼の詳細を訊ねた。
「街の復興も進み、教会が感謝のバザーを行いたいそうじゃ」
「警護ですか」
「表の警護は王立の騎士団がやるらしい。君たちには陰の警護をしてもらいたい」
「陰の」
「こちらが探る限り、怪しい動きもないようじゃ。何もなければそれまで」
「来月のはじめの日曜日、朝から礼拝が行われた後に広場でバザーが開催される。
人々がバザーを楽しめるように、見守ってやってくれ、頼む」
「かしこまりました」
ジェラールの言葉に、そこにいた『魔女の罪』のメンバーたちもうなずきあった。

「なんだか、普通のギルドみたいデスネ」
リチャードが頬を高揚させている。
「バザーなんて、久しぶりだゾ」
ソラノも期待を隠せない。
「年甲斐もなくはしゃぐんじゃねぇぞ、ソラノ」
ソーヤーがニヤリと笑った。
「年甲斐とは余計だゾ」
「ホント失礼だよ」
メルディがソラノをかばう。
「きっと美味しいものもたくさんありマスネ」
「オレたちはバザーを楽しみに行くんじゃないよ」
マクベスもリチャードの期待値が上がるのに釘を刺した。
とはいえ、メンバーたちも自分たちへの『まともな依頼』に喜びを隠せなかった。


しかし、人のにぎわうバザーにまぎれて、闇の魔法に
関する取引が行われないとも限らない。
久しぶりの祭事だ。
当日は大勢の人が集まるに違いない。
一人として犠牲者を出してはならない。
ジェラールは準備にとりかかることにした。
「君たちに任せれば安心じゃな」
ウォーロッドは満足そうに紅茶を飲みながら一人うんうんと首を縦に振っていた。




つづく
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