storyX 『紅の螺旋』(連載中)5/22up

□第6章 分かれ道、迷い道
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第6章 分かれ道、迷い道

ガジルは立ち上がり、ポーリシュカさんに魔法薬を売りに来た男の顔を見ようと決めた。
「ガジル」
レビィが制止ともつかない声で夫の名を呼んだ。
ふと評議員時代を思い出す。
「話を聞くだけだ」
「・・・・・・でも」
「ただの客なら、相手にしたってどうってことないことだろうがよ」
リリーも同行しようと立ち上がる。
滅竜魔導士としてのガジルの力を誇りに思うレビィだ。
心配はしていない。
それでも『古代魔法』という言葉から、あの不透明な人物『LR』を想像させた。
禍々しさは感じないが、それでも接し方を誤ると、世間に敷かれた不可解さを取り除くことができなくなってしまうかもしれない。
それは避けたいと考えている自分も、未だに評議員時代の癖が抜けていないとレビィが苦笑した。

一方、一夜はアンナ先生とレビィのそばにいることを決めたらしい。
「危険なパルファムではないが・・・・・・いやむしろ」
「むしろ?」
アンナ先生が一夜の言葉の続きを待った。
「このパルファムは、初めてではないような・・・・・・だが記憶にはないメェーン」
そういう一夜自身も、そこにいる誰も、その言葉の意味がわからなかった。
初めてではないが、記憶にない香りとは。
「わたし自身が嗅いだというより、彼の放つパルファムは過去への憧憬のような、誰かへの思慕のような」
「そんな想いまで読みとれるなんて、さすがIOY(Ikemen of the year)
ね」
アンナ先生が一夜を褒め称えた。


「ちょっといいか」
ガジルは開かれたままのドアにノックしてから、薬室へと入って行った。
「ガジル」
ポーリシュカさんが呼んだ名前に、男が反応した。
「オレは滅竜魔導士だ。どうもその魔法薬の匂いが気になっちまったらしい」
ガジルが自分なりに顔を出した理由を口にした。
「・・・・・・『妖精の尻尾』の魔導士か」
「オレたちのことを知ってンのか?」
ガジルがオレたち、と言ったのにはわけがある。
『妖精の尻尾』ときたら、フィオーレでは有名な魔導士ギルドだったからだ。
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