storyX 『紅の螺旋』(連載中)5/22up

□第5章 森の魔法薬剤師 
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「もう、腹ン中の子どもたちにも聞こえンのかよ」
ガジルがポーリシュカさんの方を見て尋ねた。
「ああ、それに滅竜魔導士の子だ。耳もいいだろうよ。話しかけてみたらどうだい」
「オイ。お前ら、元気に出てこいよ」
ポーリシュカさんにうながされたガジルが自分のお腹に向かってそう言うのを、レビィはくすぐったい思いで聞いていた。

診察を終えたレッドフォックス夫妻は、アンナ先生と一夜のテーブルの隣に待機していたリリーの元へ腰を下ろした。
「ガジルくん、レビィさんがご懐妊されたそうだね。おめでとう」
「ああ、ありがとよ」
「ありがとうございます」
「キミたち二人の子どもだ。きっと立派な魔導士になるだろう」
「そうね」
「レビィ、順調か」
リリーが心配そうに聞いた。
「うん、赤ちゃん、ふたごなんだって」
「ほう」
「まあ!」
「それは、幸せマックスのパルファム。めでたさも二倍メェーン」


リンリンリン・・・・・・
ポーリシュカさんの診察所のベルが鳴った。
患者が訪ねてきたらしい。
「この感じは・・・初めてだね」
ほぼ誰かの紹介でやってくる魔導士たちの発する魔力の波動をポーリシュカさんは覚えていた。
当然魔導士の波動はある程度ガジルや一夜たちにも伝わっていて、誰しも警戒心はもっていなかった。

「はい、お待たせ」
ポーリシュカさんがドアを開けると、背の高い銀髪の男が立っていた。
スタイリッシュなメガネをかけている。
「こちらは魔法薬剤師どのの家か」
「そうだが、誰かの紹介かい」
「いや。それに診察依頼ではない」
「じゃあ、何の御用だね」
「オレには不要のものだが、魔法薬を手に入れたので、使えるものなら仕入れて貰いたい」
「薬の押し売りかい」
「まぁそんなところだ」
「見せて貰うよ」
男が包みを開いた。
皮袋に小さな小瓶がいくつか入っていた。
「アンタ、これどこで手に入れたんだい」
「密売しているヤツらから取り上げた。合法に使われると思えないヤツらから搾取するのは問題ない」
「・・・・・・これが何の薬が知ってるのかい」
「幻術に使われる秘薬。古代魔法の名残だろうと推測した」
「当たりだよ」
古代魔法、という言葉に別室に控えるガジルたちが反応していた。




つづく


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