storyX 『紅の螺旋』(連載中)5/22up

□第5章 森の魔法薬剤師 
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第5章 森の魔法薬剤師

LRの噂は噂のまま、魔導士たちの間で広がっていった。
それでもLRを詮索したりする者は現れなかった。
密売されかけた魔法具や古書は評議院に届けられるように仕向けられ、枯れた薔薇を残して鮮やかに姿を消す魔導士は掴みどころのない風のようだった。
そしていつの間にかLRの目指す先が暗いものではないことを誰もがなんとなく察していた。


ガジルの子を宿していたレビィが検診のためにポーリシュカさんのところを訪ねた折、珍しい客と鉢合わせた。
「アンナ先生はともかくだな」
ガジルが信じられないと言った顔つきで、テーブルに並んで座り、ケーキを頬張る二人を見比べた。
「なんでアンタがここに居ンだよ」
「甘いスィーツのパルファムこそ、人を集わせ、勇気づけ、幸せな力を発揮させてくれるものなのではないかなメェーン」
「素敵な発想ね」
アンナがにっこりと一夜・ヴァンダレイ・寿を見つめながら、その意を褒め称えた。
「き、君にそう言われると、て、て、照れてしまうじゃないか」
「まあ、うふふ」
「「「「・・・・・」」」」
そばにいたガジルとレビィとリリーとポーリシュカが言葉を失った。

「コイツら、できてンのか」
ガジルがボソボソとポーリシュカさんに聞いた。
ポーリシュカさんがふるふると首を振った。
「あたしにもよくわからないんだよ。気が合うのは本当らしいけど、二人とも呆れるくらいウブなもんでね」
「「「・・・・・・」」」
「あんたたちが二人にここで会うのは、初めてだったね」
ポーリシュカさんがことの次第を語り出した。
「アンナ先生と一夜さんはよく来るんですか?」
「あたしも異世界(エドラス)からここに住みついた薬剤師の端くれとして、アンナ先生の身体が気になってね」
「なるほど」
「会ったついでに診察すればいいかと、お茶に誘ってみようと思ったのさ」
三人が次の言葉を待った。
「そこで、アンナ先生とのつなぎをたまたま来ていた『青い天馬』のイヴに頼んだら、トライメンズに一夜もくっついてアンナ先生を連れて来たのが始まり」
「「「へぇ」」」
「2回目からは、一夜が一人でアンナ先生をエスコートをしてきてさ」
「「「へぇ!」」」
「今日はその3回目さ」
「「「へぇ!!」」」
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