storyX 『紅の螺旋』(連載中)5/22up

□第4章 どこかにいる誰か 
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第4章 どこかにいる誰か

「『魔女の罪』のやり方と被るっつーか」
そのひと言にジェラールとエリック、メルディが顔を見合わせた。
「ちょうど『魔女の罪』のお歴々も同席してるなら話が早い」
「いや、ソラノに聞いてここに来たんだ、オレたちは」
『魔女の罪』のメンバーであるソラノが妹であるユキノに会うために『剣咬の虎』を訪れた頃、ちょうどLRの話題になり、それならばジェラールたちが訪ねている『妖精の尻尾』へ行って話そうという流れになったのだと、ローグが付け足した。

かつての古代魔法の中には、これまで闇の魔術に分類されるものばかりが表立っていた。
魔法の存在そのものが、その力を持たない者にすれば恐怖の対象となったことからそれらは秘匿されてきた。
そして魔力を持つ者も、人里から距離を置いていた。
しかしその力を持ったゆえの支配欲に駆られた者もいた。
魔法をうまく使って人々の暮らしを支えた集団もあれば、ドラゴンと戦う集団もあり、魔法によって支配される階級が生まれた集団もあった。
魔法がこの世に生まれたとき、それはただ生命の祈りだったのかもしれない。

そして魔法はいきもののように、形をかえ成長し、人々の祈りと生命を吸い取っていった。
闇の中で大きくなりすぎた古代魔法のあるものは封印され、あるものは忘れ去られた。
そして時が流れ、現在のようなギルドができあがり、使われる魔法もかつてとは異なっていた。
それでもやはり戦いや争いが起こり、それを何度が繰り返して、今のような平和なフィオーレを取り戻したのだった。
ゼレフとの戦いについては、誰も何も口にしなかった。

また正規でも闇でもない、ただの魔導士ギルド『魔女の罪』が結成された理由については『剣咬の虎』のマスターであるスティングはもちろんフィオーレに生きる魔導士たちも承知していた。
そして結果集ったメンバーたちが強者であることも知られていた。
スティングが話の続きを始めた。

「闇の魔法に手を出したヤツらが片っ端から明るみに出て、それを正して回ってんのがLRらしいんスよ」
「正して、回る、だと?」
エルザが問い返した。
「こないだ『剣咬の虎』の近くの酒場で闇の魔法具を売りさばこうとしてたヤツらがいたらしくて、商談中に商談相手の一人がすでにLRと入れ替わってて、魔法具は取り上げられて、そいつらの魔力も無力化されて、気が付いたら枯れた薔薇が残ってたっていう」
「なんで、LRってわかるんだよ」
「本人が名乗るからッスよ」
「ケッ、余裕ぶっこいて口上でも読み上げやがンのか?」
今度はガジルが突っ込んだ。

「薔薇に『LR』とだけ書いたカードが挟まれてるらしいッス」
「だが薔薇が枯れるとカードも燃えて消滅し、手掛かりも残らぬと聞く」
そう言うミネルバも興味があるらしい。
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