storyX 『紅の螺旋』(連載中)5/22up

□第2章 枯れた薔薇
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「『悪魔の心臓』と『六魔将軍』の魔導士と元囚人が『魔女の罪』で一緒になって、揃いも揃って『妖精の尻尾』に用事があるなんておかしなもんだな」
「現実は奇なりってやつだ」
「二人は彼女に会いに、わたしは親友に会いに、だけどね」
「またそれか」
「わたしとジュビアにも絆があるから、よしとするわ」
メルディが笑った。

この屈託のない笑顔を見せられる強さがあれば大丈夫だと。
ウルティアがいなくなり、ジェラールは半ばメルディの後見人のような気持ちになることがあった。
これもまた絆というものかもしれない。

「そうだ」
メルディがぽんと手をたたいた。
「ジェラールもエリックも、エルザとキナナにお花でも買って行ったら?」
「花?」
「絶対喜ぶよ」
「そんな単純なもんかよ?」
「もう絶対だよ」

先ほどの道端に捨て置かれた枯れた薔薇がメルディの脳裏をよぎった。
恋人へ贈られる花は最後まで美しく飾られるといい。
そんな花の一生の方が素敵。
メルディは枯れた薔薇の映像を振り払いたかった。
切なさに似た感情と共に。

「お花屋さんに寄って行こうよ」
二人とも応えない。
だが先頭を行くメルディが花屋を目指して歩くと、二人もそろって着いてきた。
「今の季節だとどんなお花があるのかな」
エリックはキナナの喜ぶ顔を、
ジェラールはエルザの照れる顔を、
思い描いた。
「わたしもジュビアに買って行こう」
メルディが思いついたように言った。
「ジュビアも絶対喜んでくれるわ」
そう思いついたメルディ自身も楽しそうだ。

枯れた薔薇の想いに飲み込まれることなく、咲き誇る花を選び愛する人へ贈る喜びと、贈られる人の想いへ舵を切り替えた。
君の魔法は間違っていないよ、とジェラールは口にしようとしてためらった。
本人もわかりきったことだと気づいたのだ。

「あ、あそこにお花屋さんがある」
メルディが小走りになった。
「花は逃げねぇぞ」
やれやれとエリックも早足になる。
そのすぐ後ろをジェラールが追いかけた。


つづく


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