storyX 『紅の螺旋』(連載中)5/22up

□第1章 海岸線
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第一章 海岸線

王宮に呼ばれた時は、てっきり女王自らに裁かれるものだと思っていた。
「まさか、恩赦だったとは」
「デスネ」
ミッドナイトことマクベスのつぶやきに、ホットアイことリチャードが同意した。
もちろん彼らだけでなく、その場に居合わせた『魔女の罪』のメンバーも似たような心境だった。
今となっては、魔法を使ってあらゆる悪に手を染めてきた過去に語り尽くせないほどの後悔をしているのだろう。
ヒスイ陛下の言う、
「あなた方も被害者」
という言葉に甘んじてはいけないこともわかっていた。
だからこそ、恩赦を受けてすぐ、正規ギルドではなかった『魔女の罪』を正規ギルドへの申請をして続けていくことを全員一致で決めた。
犯した罪は許されるものではない。
だが罪を忘れることなく生きていく道を与えられた。
罪人ではなく一人の人間として。


「これからは魔導士として依頼を受けるってことか」
独り言のようなレーサーの言葉に、相槌をうつのはエンジェルことソラノ。
「依頼なんて、くすぐったい響きだゾ」
「オレたちに依頼なんて来るのかよ」
「来るさ」
ジェラールが断言した。
「いや、来ないなら探せばいい。きっと困っている人はたくさんいる」
「デスネ」
「オレが心の声を聴いて、依頼人を見つけてきてやる」
コブラことエリックの言葉をジェラールとソラノが否定した。
「それはダメだ」
「プライバシーの侵害だゾ」
「そうかよ」
メンバーたちも自由の身になれた喜びを、静かに味わっていた。
何も言わないメルディの様子を見たジェラールが優しく声をかけた。
「どうした?メルディ」
その言葉にメルディがハッと身構えた。
「?」
いつもと違う反応にジェラールが首をかしげる。
「なんでもない・・・なんでもないの」
「ヒスイ陛下のご厚意を賜った記念だ。今日は久しぶりに『妖精の尻尾』にでも行ってきたらどうだ」
メルディも、ジュビアに会っておしゃべりを楽しめば、よい気分転換になるのではないかと考えた。
「うん・・・」
メルディはうなずいてから、あることを思い出し、
「あ、ジェラールも行く?行くよね?」
と聞いた。
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