妄想SS☆置き場 12/8up 

□2011年12月分
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☆『フリマ!』その後2


その日、メルディはウルティアとともに買い物に出かけていた。
街はすっかりクリスマスムードに包まれ、クリスマスの買い物を楽しむ人々で賑わっていた。
アースランドでも有名な羊皮紙や羽ペンを扱う店で、ウルティアがメルディに新しい色鉛筆を買ってあげようかと提案していたときのこと。

「あれ、あの人」
メルディがカウンターで店長と談笑している背の高い黒髪の男を見つけた。
「あら、この間フリマでヒカルの人形を買ってくれた人?」
「うん」

「こちらの羽ペンでしたら、レビィ様も兼ねて目をつけておいででしたので、クリスマスの贈り物には最適かと」
店長がうやうやしく接客する相手は、まごうことなく妖精の尻尾の魔導士、ガジル・レッドフォックス、その人だった。
「フーン」
「はい。少々値は張りますが…この羽は貴重な不死鳥の尾羽なんでございますよ」
「へぇ」
「ご聡明なレビィ様の魔力をさらにひきたてるのに、まちがいございません」
ご聡明なレビィ様、と言われてガジルは思わず顔をほころばせる。
「じゃあ、それにする。包んでくれ」
「かしこまりました。クリスマス用のお包みでよろしゅうございますか?」
「アア」

あの青い髪の女の人へのプレゼントかな。
ガジルの様子をじっと見ていたメルディは、そう考えた。
この人も髪が長いなぁ。
ザンクロウとどっちが長いだろ?
背はこの人の方が高いかな。
でも、ザンクロウの毛はふわふわでとっても気持ちいいんだもんね。
ふとメルディの胸にザンクロウの髪の毛を触って遊びたい、という思いが湧き起こる。

「メルディ、かわいいのいっぱいあるわよ。どれにする?」
「あ、うん」
ウルティアに色鉛筆を買ってもらえるうれしさと、早くギルドに帰ってザンクロウと遊びたいという思いでいっぱいになるメルディの心は満たされていた。



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☆「師走の街で…」(ガジレビ篇)


クリスマスや年末の買い物やら準備やらで、なにかと気ぜわしいこの季節。
ガジルとレビィもあわただしい休日を過ごしていた。

「このあと、ホリーさんとケイトさんに贈るクリスマスプレゼントをえらんで…それからリリーにもね」
「オウ」
「リリー、何がいいかなぁ」
「アイツの欲しがるもんていやァ、変形する剣とかキウィぐれェしかうかばねェな」
「・・・剣にキウィ。クリスマスプレゼントにしてはちょっと、ね」
「そうだな」
12月にしてはまだ暖かいある休日。
二人がオープンカフェで一休みしていたときのことだった。

「誰か、そのひったくり、つかまえて〜!」
そこにいた人々が声のする方を見ると、女性もののカバンを持って走って逃げようとする男を見つけた。
一目了然、ひったくり犯らしい。
「!」
レビィをはじめ周りにいた人々がハッとしたその瞬間。
「鉄竜棍!」
ガジルの腕が鉄の棍棒のように伸びて、一瞬でひったくり犯の背中をとらえた。

鉄竜棍を背中にくらった犯人は痛みのあまり気を失い、駆けつけた警察官(アースランドにそんなのがいるのかは不明)に捕えられた。

「あの人、すごいね」
「妖精の尻尾の魔導士さんじゃない?」
一躍、警察官や周りの人々からも賞賛の声を浴びたガジルだったが、顔色一つ変えず、レビィの前に座って冷めたコーヒーを飲んでいた。

「うふふ」
「なんだよ」
「すごいなぁって」
レビィがうれしそうに笑って、ガジルを見つめる。
「ケッ。別に、大したことじゃねェだろうが」
レビィに見つめられた恥ずかしさに、ガジルはぷいっと横を向いた。
確かにガジルにとっては、ひったくり犯をとらえるくらい大したことではない。
しかし、レビィにとっては、愛する夫の変貌ぶり(ファントム時代を察すると)に、改めて心をうっとりとさせたのだった。

こんな日がくるなんて。
目の前にいる、一見いかつい黒髪の滅竜魔導士と共に、実に幸せな日々を送る自分。
その幸せに、レビィは満ち足りた笑顔でガジルにほほ笑んだ



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☆「師走の街で…」(ザンメル篇)


今日はザンクロウとメルディの二人でお買い物。
メインはメルディからウルティアへのクリスマスプレゼント選び。
ザンクロウはというと、メルディから何か物をもらうことより、一緒にいてくれたそれでいい、と本気で思っているので、機嫌よくウルティアへのプレゼント選びに付き合っていた。
しかし、ウィンドーに飾られたメルディ世代のかわいらしい洋服を見るたびに、コレを着てみろだの、アレを買ってやろうか、などと足を止めてはメルディを困らせていた。

「やっぱり、さっきのストールにしようかな」
「そうだな〜無難なとこじゃね?」
「無難?」
「い、いや。アレでばっちりだってぇ。それよか、さっきの服に、あのブーツを合わせっとかわいいって」
「私のはいいから」
「ウルティアさんのは決まったじゃんよ〜。メルディさっきの服、試着してみろって」
あまりにザンクロウが熱心に勧めるので、ふとメルディがその気になった時のこと。

「誰か、そのひったくり捕まえて〜」
そこにいた人々が声がした方を見ると、女性物のかばんをもった男が走って逃げているところだった。
その一瞬ののち、魔導士らしい黒髪の男が放った鉄の棍棒がひったくり犯の背中に命中した。
直後、ひったくり犯が倒れる際に周りの人間を巻き込み、そばにいたメルディに倒れかかってきた。
「!」
「おっと」
ザンクロウはメルディを両腕に抱え一瞬で人の頭の高さを超えたあたりまで飛び上がり、さっと後方の誰もいない場所に飛び去った。
ザンクロウとメルディがいたあたりの人々は、ひったくり犯の転倒に巻き込まれ、将棋倒しになってしまった。

「あっぶねぇの」
「…ありがと。ザンクロウ」
ザンクロウの腕の中で、メルディがお礼を言った。
「へへへ。なんならずっとこのまま歩いてってもいいけどよ」
「降りる」
「ちぇっ」
ザンクロウは名残惜しそうに、自らの両腕からそっとメルディを下ろした。
メルディは少し頬を赤らめながら言った。
「…さっきの服、着てみようかな」
「おお〜!そうして!そうして!」

ひったくり騒動の渦中、ざわつく人々の姿など、まったく意に介さないザンクロウは、メルディの小さな手を握ると、目指すお店へと足早に戻って行った。


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