妄想SS☆置き場 12/8up 

□2012年4月分
1ページ/2ページ


☆暴風雨

街でガジルと待ち合わせていたレビィ。
その日は予想以上の暴風雨。
「すんごい風〜。ガジル、早く来ないかなぁ。あ、来た!ガジル〜!」
ガジルに向かって手を挙げたレビィの身体をいたずらな暴風が包む。
「きゃあ!」
「レビィ!」
吹き飛ばされそうになったレビィはガジルに抱き抱えられる恰好に。
「はぁ〜ありがとう」
「あっぶねぇな」
「すんごい風だね。吹き飛ばされるかと思っちゃった」
「…お前、見えてたぞ」
「へ?」
「ったく!」
「ええ〜!?」
真っ赤になるレビィ。
つき合いはじめた頃の二人。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


☆ 春だもん ザンメル篇


春。
グリモアハートの戦艦でも、春の大掃除が行われていた。
みんなで一通りの大掃除を終えた頃、ブルーノートがザンクロウのところにやってきて言った。
「おい、ザンクロウ」
「アア?」
「お前、このこたつ布団、クリーニングに出してこいや」
この冬、ブルーノートが特注した巨大こたつのこたつ布団は、やはりとてつもなく大きかった。
「アア?なんでオレっちが?オッサン、自分で行けよ」
「俺にそんな口聞いていいのか?このこたつお前らが一番使ってただろうが。おい、メルディ」
「なに?」
「ほら、先に駄賃をやる。ザンクロウと二人で、クリーニング屋に行ってこい」
「お駄賃?けっこう多いよ?」
ブルーノートに渡された紙幣を見てメルディが言った。
「残りで、ビール1ケース買ってきてくれ」
「オッサン、オレっちの駄賃は!?」
「だからお前にはメルディをあてがってやってんじゃねぇか。充分だろ」
「ううう〜」
確かにブルーノートの言う通りなので、ザンクロウは素直に巨大なこたつ布団を抱えて、メルディと出かけることにした。
しかし。

ったく!
こんな邪魔なモンもってたら、メルディと手もつなげねぇっての!

「ザンクロウ、半分持ってあげようか」
「メルディってば、やっぱ優しいなァ〜。こんぐれぇ重くねんだけど、コレ、邪魔なんだって」
「そうだね。大きいもんね」
ザンクロウの抱える巨大なこたつ布団の反対側をメルディが抱え、二人は前後になって歩き出した。

これじゃメルディの顔も見れねぇっての!
ちくしょ〜!

戦艦を下りて、街へ歩き出すと桜の花が咲きはじめていた。
「桜、咲いてるよ」
「オオ〜」
「かわいいね」
「メルディの髪の色とおんなじだってか。へへ」
そう思うと確かにかわいい。
クリーニング屋までの道すがら、二人はのんびりと春の散歩を味わった。
巨大なこたつ布団をクリーニング屋に預け、やっと両手が自由になったザンクロウは大きく伸びをした。
「アアアア〜すっきりしたって!」
「けっこう大変だったね」
自分を見つめるメルディの緑の瞳が愛しくて、自由になった両手を自分の意思通りに動かせるのがうれしくて、ザンクロウはメルディの両手を握りしめた。
「ご苦労さんっ!重かったろ?」
「そんなことないよ」
ヤバい。
かわいすぎる。
抱きしめたい。
「ええええっと、次はオッサンのビールだって」
「うん」
ザンクロウはメルディの肩を抱くことで我慢して酒屋へと歩き出した。

「こっちのラガー1ケース」
「毎度ありっ!」
支払いを済ませ、ビールのケースを抱えると、これまたケースが二人の間の邪魔をした。
こんなモン買わせやがって〜。
オッサン、覚えてろ!!

ケースを抱えて歩き出すザンクロウの腕に、メルディがそっとしがみついた。
「!」
驚いてザンクロウがメルディを見下ろすと、緑の瞳がニコッと笑って自分を見つめていた。
「メルディ、ちょっと待って」
「?」
ザンクロウは右肩にビールのケースに乗せ、左手を解放することにした。
それからぐいっと自分の左ひじをメルディの方へ差し出した。
「ほら、さっきみたいに、やって」
「…うん!」
メルディはさっきより、つかまりやすくなったザンクロウのたくましい左腕にしがみついた。
「へへっ」
二人はぴったりくっついて、春の道を戦艦へと戻って行った。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


☆春だもん ガジレビ篇



4月に入ったある日、レビィはガジルの部屋で晩ごはんを作っていた。
かねて約束していたとおり、リリーに部屋に入れてもらうと、早速料理を作り始めた。

「何を作る予定なんだ?」
「えへへ、ちらし寿司だよ」
「ほう」
「3月の雛祭りの時にね、ホリーさんの魔法教室に仕事で出かけて、そのときホリーさんお手製のちらし寿司をごちそうになったの。あまりに美味しかったからレシピを教えてもらったんだ」(ホリーさん、については『俺の道』『ドラゴンの館』参照)
「そうなのか」
お米をとぎながらそう話すレビィは、かつてお料理はあんまり得意じゃない、と話していたころとは比べ物にならないくらい手際が良かった。(『nostalgic future 追憶の未来』参照)
「ガジルもきっと喜ぶだろうな」
「うふふ」
ガジルの恋人と、ガジルの相棒。
いつしかレビィとリリーはガジルを挟んで同じ輪の中にいるようになった。
お互いにガジルを思いやることで、お互いを理解することができた。
いわば「同志」のような一面もあった。
しかも二人とも、出会いはガジルとは敵同士というところも同じなのだ。


そのころガジルは。
ちょっと面倒なクエストの結果を、ギルドでマスターに報告してから自分の部屋にもどるところだった。
ギルドから自分の部屋に戻るまでに、街路樹として植えられた桜の木があった。
桜には薄いピンクの花が咲いていた。
温かくなった夕方の空気に混じって、桜の花のかすかな香りがガジルの鼻をくすぐる。

「・・・」
綺麗な花だな。
レビィが見たら「見て、ガジル!きれいだねぇ〜」なんて言うに違いない。
見せてやりてェ。
「・・・」
枝を折る、持って帰る、レビィに見せる・・・
ガジルの脳裏でその後の展開が繰り広げられる。
「わぁ、きれいだね。ガジルこれどうしたの?まさか、折ったの?」
そんな言葉でレビィに詰問されたらなんて言えばいいのだろう。
「お、俺がそんなことするかよ!?」
・・・だな。
折るのはマズい。
これから夜の花見に行って・・・というのも、悪くはない。

桜の木の下で腕を組み、じっと考え込むガジルに声がかかった。
「やぁ。ガジル」
「ロキ!」
ロキはどうやら食べ物のつまったらしい紙袋と、登場に欠かせない?花束を抱えていた。
「こんにちは。いや、もう、こんばんは、かな?」
「お前ェどうしたんだ?ルーシィに呼び出されたンじゃねェのか」
「今日は自分の意思でルーシィに会いに、ね」
「フン」
「これから夜の花見デートなんだよ」
「へェ」
「ガジルもレビィと行ってきたらいいのに」
「い、イヤ、俺は」
「あ、それとももうレビィが部屋で待ってるとか?」
「な!」
図星をさされて赤くなりムキになるガジルを見て、ロキがほほ笑んだ。
「そう。じゃ、お花でも買って帰ってあげなよ」
「花!」
そういえば、以前もロキにそそのかされてレビィに鉢植えを買っていったことがあった(『forget-me-not』参照)
躊躇するガジルを尻目に、ロキは片手をあげてルーシィの部屋へと向かって行った。

花、か。
そうだな、当然ながら、桜の枝を折るよりずっといい。
ガジルはギヒッと笑うと、近くの花屋へと歩き出した。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

☆春だもん その後1


戦艦に戻ったザンクロウとメルディ。
出迎えたのはヒカル。
「ごごごご苦労様ッス!ビール、自分が運ぶッスよ」
「悪ぃな」
ザンクロウがう〜んと伸びをして、ポンポンと自分の右肩を叩いた。
「重かった?」
「いやぁ〜メルディほどじゃねぇってぇ〜」
ずっと自分の左ひじに感じていたメルディの温かさを満喫しようと、ザンクロウがメルディを「高い高い」した。
「きゃ」
「へへへっだいじょうぶだってぇ」
「オウ、お前らか」
そこへブルーノートがやってきた。
「オッサンが重くて邪魔なモンばっか持たせっから、疲れたっての!」
「ケッ。メルディを抱っこすんのは別かよ。色気づきやがって」
「うるっせぇ!」
ザンクロウはメルディをそっと下ろすと、ブルーノートに向かってべーっと舌を出した。

「あら、メルディ、帰ったの?」
今度はウルティアがやってきた。
「ただいま」
「今夜はお花見よ」
「お花見?」
「ええ、マスターの思いつきでね。なんでもアズマがお花見の穴場を知ってるとかで」
「へぇ」
「ビール買っといてよかったじゃねぇか」
「買ってきたのは、オレっちだってぇの!」
どうやら、これからグリモアハートは花見の宴を催すらしい。



こちらはガジルの部屋。
帰ってきたガジルが玄関のドアを開けた。
「あ、帰ってきたみたい」
その音を聞きつけたレビィが玄関の方へパタパタと走って行った。
「ガジル、お帰りなさい!」
「オウ」
「なぁに?それ」
「あ、コレか」
レビィはガジルの抱えた鉢植えを見て言った。
「山椒、だってよ」
「山椒?」
「お前ェがちらし寿司作ってくれるってっから、ちょうどいいかと思ってよ」
「へ、へぇ」
確かに。
実用的では、ある。
ちらし寿司の上に飾っても、お吸い物に入れても。
「ちっと、匂いがキツイか?」
「そんなことないよ、イイ香り。ねっ、リリー」
「あ、ああ」
どうせなら、花束とかのほうがよかったんじゃ?
リリーも残念そうにガジルを見た。
「なんだよ?」
「い、いや別に」
「さ、レビィのちらし寿司、よばれるとすっか」
「ああ」
「うん!食べよ!」
「さっさと食ったら、出かけンぞ」
「へ?どこへ?」
「夜の花見、だよ」
「!」
レビィとリリーは顔を見合わせた。




つづく
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



☆春だもん その後2



アズマのおススメのお花見の穴場とは、崖にはばまれた一角に広がる広場だった。
どうやっても、こんなところに人が足を踏み入れられそうもない。
しかしどういうわけか、艦を止めるだけの広さがそこには確保されていた。
まるで船の隠し場所でもあるかのように。
「桜なんてねぇじゃん」
真っ先に甲板に出て、戦艦のまわりをきょろきょろ見回しながら、ザンクロウが言った。
「今日あたり満開だと思ったが」
「どこがだよ?」
ザンクロウは右隣にやってきたアズマを見た。アズマは空を見上げている。
「フム。ちょうど、我々を歓迎してくれたようだね」
「アア?」
アズマが胸の前で両掌を上にした。
「あ」
ザンクロウの左隣にやってきたメルディがそれを見てつぶやいた。
花びら。
広げたアズマの掌にはらはらと桜の花びらが舞いおりてきたのだ。
「ほう!」
「すげぇな」
集まったハデスとブルーノートが見上げた崖に桜の木々が列をなして生えていた。
気がつくと、戦艦の甲板のあちらこちらに桜の花びらが舞っている。
人の手が届きそうで、届かない場所で、誰にも邪魔されず、いく本もの桜の大木がそこに寄り添うように集まっていた。
そこは闇ギルドであるグリモアハートにこそふさわしい、花見の宴の場所に思われた。
「こんな綺麗なのに、誰も知らないのね」
「まさに穴場。闇の桜」
「ししし静かな花見の場所ッスね」
アズマがウルティアの掌にそっと花びらを滑り込ませた。
「花びらの意味を問うのは邪心」
ラスティの言葉をウルティアがさえぎった。
「知ってるわ」
「ほう」
「『優れた美人』っていう意味よ。ね?」
「そうなのか、俺は知らなかったがね」
「何それ!」
アズマの天然ぶりがウルティアを呆れさせた。


「・・・」
無言で崖の上の桜の木々を見上げるメルディ。
「メルディ、口ん中に花びら入っちまうってぇ」
桜を見上げるメルディの顔を、ザンクロウが上から覗き込んだ。
赤い瞳と緑の瞳がぶつかりそうになる。
「!」
メルディの頬が赤くなった。
「ぎゃははは!今、キスされると思ったってぇ?」
「もうっ!」
「こんなとこでしねぇって!」
ザンクロウはそういうと、さっとメルディの目の前で膝をついた。
「ホラ」
「?」
「肩車してやるってぇの。ちったぁ、桜の木に近くなるって」
ザンクロウの申し出に、メルディは笑ってうなずいた。




つづく
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ