妄想SS☆置き場 12/8up 

□2012年3月分
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☆ドラゴンの湯 その7


「自分、ウルティアさんたちを呼んでくるッス」
鍋奉行・華院ヒカルが動いた。
コンコン。
隣の部屋のドアをノックして、ヒカルが声をかけた。
「ウルティアさん、メルディ、そろそろ夕食ッスよ。いるんスか?入っていいッスか?」
「どうぞ〜」
中からウルティアの声がした。


「ぎゃはははは、くすぐってぇってぇ〜」
「ザンクロウの毛、ふわふわで気持ちいい〜」
「!」
鍋奉行・華院ヒカルがそこで目にしたのは…。
メルディに濡れた髪をブローしてもらっているザンクロウの至福の姿だった。
「ななななな何なんスか!?ちょっとウルティアさん、アレ、いいンすか!」
あまりに仲睦まじい二人の様子に嫉妬を覚えたヒカルがウルティアに詰め寄った。
「こんなにお腹の減った自分の前でイチャイチャするなんてひどいッス!!」
「ああ、アレ?さっきまで、ザンクロウがメルディの髪を乾かしてくれてたから、交代したらしいわよ」
ウルティアがパックした顔で、しゃべりにくそうにヒカルの詰問に答えた。
「…うらやましいッス…」
「あら、ヒカル、もう食事なの?」
「そうッス!!今日は猪鍋なんス!自分が仕切らせてもらうんス。そこの二人!髪が乾いたらすぐ来るッスよ!!」
かなりの剣幕でそうまくしたてると、ヒカルは戻って行った。

「気持ちいいなぁ〜。オレっち、メルディにずっとやってて欲しいって」
「ダメよ」
パックを外したウルティアがザンクロウの至福の時に終止符を打った。
「はい、ザンクロウ。乾いたよ」
メルディがザンクロウのふわふわの金髪を確かめながら言った。
「サンキュ〜」
お礼かたがたメルディを抱きしめようとしたザンクロウの浴衣の襟をつかんで、ウルティアが立ち上がらせた。
「ホラ、さっさと食事に行かないと。皆待ってるし」
「ちぇ〜」
名残惜しそうに立ちあがるザンクロウの傍らでメルディが笑っていた。






つづく


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☆ドラゴンの湯 その8



舞台は再びさかのぼって、ガジルたち一行がクリスティーナ・改に乗せてもらって出発する前の妖精の尻尾のギルドにて。

「レビィちゃん、ほら、あのおいしいお漬物買ってきて」
「ノザワ菜でしょ?わかった。アレ、おいしいもんね」
「そうそう。意外と酒のつまみにもいいんだぁ」
女子たちがお土産の話題で盛り上がるそばで、リリーがウェンディとシャルルのところへ歩み寄った。

「コホン」
「何よ?」
改まったふうなリリーを見て、シャルルが首をかしげる。
「き、昨日のチョコレート、うまかったぞ」
「ああ、アレ?ウェンディと一緒に作ったかオマケね。ハッピーにもあげたのよ」
「そうか」
「それよりアンタ、言いたいことはそんなことじゃないでしょ?」
シャルルがリリーの様子を勘繰った。
いつもながら勘のいいエクシードである。
「よくわかったな。では、手短に言おう。ウェンディ。一度眠ったら起こされるまで起きない魔法をかけられるか?」
リリーが頬を紅潮させながら、言いにくそうに一息でウェンディに言った。
「え?」
「アンタ、そんなものどうするのよ?」
「・・・」
ウェンディは、にっこり笑って言った。
「ありますよ。すぐにかけてあげますね」
ウェンディは何やらぶつぶつ小声でつぶやくと、リリーの頭をそっとなでた。
「はい、できましたよ。これで、リリーが今晩眠ったら明日の朝、誰かに起こされるまでは決して目が覚めません」
「そ、そうか。かたじけない」
リリーはそういうと、ぺこっと頭を下げてすたすたと相棒のところへ戻って行った。

「何なのかしら?」
「リリーはとっても優しんだね」
ウェンデイは優しくほほ笑んでそう言った。
「?」
勘のいいシャルルもさすがに、リリーの真意はつかめなかったらしい。

「リリー何やってたンだ?」
「いや、別に」
ガジルに問われ、リリーは何事もなかったような顔をして答えた。

このあとレッドフォックス家の三人はギルドの仲間にお土産を約束し、クリスティーナ・改に乗り込んだのだった。




つづく



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☆ドラゴンの湯 その9



「猪肉はアクが強いッスからね!アクを取るんスよ」
「味噌ベースのだしには白ゴマが合うッス。カプリコこの白ゴマをすって欲しいッス」
「ああ、ブルーノートさん!豚しゃぶとは違うッス!もうちょっとよく火をとおしてから食べるんスよ〜!ああ、ザンクロウさん、そっちの鍋はアクが取れてないッス!」
自らの両脇にある二つのなべを両手で仕切り、三つ目の鍋にはザンクロウをアシスタントよろしく据え置いたヒカルは、今や完全にグリモアハートの鍋奉行と化していた。
一つ目にはマスター・ハデス、ブルーノート、ヒカル。
二つ目にはアズマ、ラスティローズ、カプリコ。
三つ目には、ザンクロウ、メルディ、ウルティアがそれぞれ陣取っていた。

「なんでもいいけど、人に料理してもらって食べるのって幸せ〜」
ウルティアもさっさと煮えた野菜を器によそって、早速猪鍋を頬張っていた。
要は、誰も鍋奉行の指示には従わないつもりらしい。
ただ一人マスター・ハデスは、辛抱強くヒカルの支持どおりに、器によそわれた、だしの味見をしていた。


「な、メルディ。鍋食ったら遊びに行こうって!」
ザンクロウがメルディに夜の計画を立てはじめた。
「まだ、滑る気なの?」
ウルティアの目が光る。
「ナイターもなかなかだぜ」
ブルーノートもナイタースキーがしたいらしい。
「もう一度、温泉に入ってもいいね」
やはりアズマは温泉が気に入ったらしい。
「今宵は皆、のんびりと過ごすといい」
そういうハデスは、おそらく早々と床についてしまうのだろう。
「・・・(老人)は早寝」
「ん?何か言ったか?ラスティ」
「いや、カタルシスなるつぶやきにすぎない」

「メルディだって外は寒いでしょ?遊技場で卓球でもしない?」
「卓球?」
「ええ」
「卓球ってぇ?」
「あら、ザンクロウしたことないの?」
ウルティアがふふんと不敵な笑みをもらした。
「な、なんだってんだよ?」
「いいわ、あとで教えてあげる」
「楽しみ」
ウルティアの「卓球」の誘いにその気になっているメルディ不服そうに見つめながら、ザンクロウは猪肉を口にほおりこんだ。

「なかなかうまい」
「こってり感がたまらないッス!」
マイペースなカプリコと猪鍋に集中しきっているヒカルがのどかに、猪肉を味わっていた。



つづく



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