妄想SS☆置き場 12/8up 

□2012年2月分
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☆ショップにて



ある日、意外とおしゃれなジェットとドロイが、ショップでベルトを選んでいると店の一角に見覚えのある長身の男を見つけた。
「オイ!」
「あれは!」
二人は声を殺した。
そう、噂のビックスローがなにやらショップの店員と楽しそうに話をしているのだ。
「やっぱり、アノ野郎、モテるって噂は本当だったのか」
「ちょっと待て。ただ、接客されてるだけかもしんねぇぞ」
「イヤ、店員の顔見てみろって。完全に仕事なんて忘れて嬉しそうじゃねぇか」
「…まあな」
「ったく!ガジルといい、アルザックといい、なんで俺たちの周りばっかに春が来やがんだ!」
「落ち着けって。気づかれんぞ」
「…」

二人が耳を澄まして聞いていると、なにやらこんな会話が。
「3対3じゃダメですか?」
「3人か。ま、どうしてもダメっていうなら、3人でも構わねェぜ」
「じゃあ3人で!私たち、いつでもオッケーですから!」

3対3?
いつでもオッケー?
それって、ついに合コンの話かよ?

ジェットとドロイはディスプレイの棚の影で両手を握りしめ、音が出ないようにグータッチをした。

「じゃあ、明日の夜とかどうですか?」
「ああ、他の連中に聞いて、また返事に来るぜ」
「わあ!ありがとうございます!お待ちしてます!」

ビックスローはうやうやしく店員に見送られ、帰って行った。
そして、ジェットとドロイはその後を追ったのだった。



つづく


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☆ショップ帰り


ビックスローの後をつけながら、ジェットとドロイはひそひそとあれこれ話し合った。
「3対3って言ったよな?」
「オウ。間違いねぇ」
「3人って、ビックスロー入れたら、残りの枠は二つだぜ?」
「フリードは?」
「ま、流れからいって、ビックスローもそっちから声かけんのが筋じゃね?」
「そ、そうだな」

となると、残り1枠。

「!」
「!」
ジェットとドロイは顔を見合わせた。
「ラクサスか!」

3人というのは、ビックスロー、フリード、ラクサスのつもりだったんじゃ?
そうなると、ジェットとドロイの出番など、ない。

「ラクサスが合コンなんて行くか?」
「それもそうだな」
「ラクサスが行かねって言やぁ、フリードもやめんじゃね?」
「ありえるな」
なにしろ、フリードはラクサスを盲信しているのだから。

となると、2枠の空きが!


そうこうしていうちに、ビックスローはギルドの中へ。
ジェットとドロイも、馴染みある我が家へと足を踏み入れた。
ビックスローは、すたすたとタウンターへ向かう。
しかし、そこにラクサスとフリードの姿はなかった。



つづく



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☆イイ大人


カウンターに座って、エルフマンと談笑するエバに、ビックスローが声をかけた。
「よう、ラクサスとフリード知らねぇか」
「あら、ビックスローじゃない。あの二人なら、アスカ連れておもちゃ屋さんに行ったわよ」
「へぇ」
「あの二人に何か用だったの?」
「ああ、ちょっとな。ショップの女子に合コン誘われてんだ」
「ラクサスが合コンなんかに行くわけないでしょ。誘ったりしたら、アンタ、ドヤされるわよ」
「やっぱりな」
「それに、今ラクサスはアスカと遊ぶのにハマってるから絶対無理ね。エルフマンだってそう思うでしょ?」
「ああ。ラクサスは意外と面倒見のいいヤツだったんだな」
ビックスローはそんなことは今更言われなくても俺は知っていると言いたげだったが、仲むつまじいエルフマンとエバの姿を見ると、そんなことを言えそうにもなかった。

一方、エルフマンの頭の中ではこんな妄想が…。
ラクサス義兄さん?
いや、義弟?
え?俺は何を考えてんだ?
ええ?
義兄と義弟って、ラクサス、漢としてそれはどうなんだ!?
って、こんなことを想像する俺は漢としてどうなんだ!?


「どうしたの?エルフマン?」
「な、なんでもない」
「とにかく、皆イイ歳なんだしぃ、いつまでも女のケツ追っかけまわしてられないでしょ?アンタも合コンなんて、今回キリにしとくのね」
エバにフンとたしなめられて、ビックスローも若干たじろいだものの、テーブルの向こうではイイ歳をしたマカオとワカバがエバのセリフにむせ返っていた。

「別に俺たちに言われてるわけじゃねぇぜ」
「そ、そうだよな」

さらにその隣のテーブルでは、あやとりに興じるウェンディとロメオの姿が。
「懐かしいわね〜。ロメオけっこううまいじゃない」
「へへへ」
アスカをラクサスとフリードに預けたビスカが二人の様子を見て言った。
「俺もあやとりは結構得意だったな」
「そうね。アルは器用だものね」


どこまでもいつもと変わらないギルドの日常だが、それを見て、歯ぎしりをする者が二人。
そう。
残り2枠に思いをはせるジェットとドロイだった。



つづく


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☆恋か仕事か


離れたところで、様子をうかがっていたジェットとドロイ。
「ラクサスは合コンなんて興味ねぇらしいぜ」
「じゃあ、俺たちが」
ジェットとドロイはカウンターへ向かおうと立ち上がった。



その頃、ラクサス一行は。
「アスカ。好きなグミマシンガン選べ」
「うん!」
おもちゃ屋でアスカが手にして吟味しているのは、今子どもの間で大流行のグミマシンガン2012。
おもちゃのマシンガンにジュースと砂糖とゼラチンを入れると中から、グミがマシンガンの弾のようになって出てくるというものだ。
アルザックとビスカの愛娘だけあって、アスカはこのグミマシンガンをかねて欲しがっていたのだ。
誕生日まで待ちなさい、という父親アルザックのしつけをまるで無視したマカロフが、ラクサスとフリードにアスカを連れてグミマシンガンを買いに行かせたという背景があった。

「やっぱり、ピンクがかわいいんじゃないか?」
フリードが持ち手のサイドカラーがピンクになったタイプのものを勧める。
「やだ」
「アスカは渋いのが好きなんだな」
ピンクには興味を示さないアスカを見てラクサスが言った。
「うん」
「じゃあ、これはどうだ」
ラクサスが手にしたのは、グミマシンガンMAX2012。
限定モデルの全身が本物の銃そっくりのブラックメタリックタイプだ。
「これにする!」
「さすがはラクサス…。こんな小さな子どもの好みまで洞察するとは」
「バカヤロー。アスカはギルドで育ってんだぜ?常に本物を目にしてるガキにまやかしなんざ、通用するかよ」
「な、なるほど」
ラクサスへの偏愛というフィルターで厚くおおわれたフリードの目は、アスカの好みは読みとれないらしい。

支払いを済ませたラクサスは、ヒョイとアスカを肩車して、フリードに荷物を持たせて、おもちゃ屋をあとにした。
「ありがとうございました〜!」
「今のは、妖精の尻尾のマスターの孫かい?立派になったもんだな…子どもまで連れて」
孫の手を引いて、おもちゃ屋を訪れた老齢の客がラクサスとアスカの後ろ姿を見ながら店主に聞いた。
フリードが客を振り返り、そしてラクサスの背中を見つめながら、静かにほほ笑んだ。


再びギルドでは。
ビックスローがついに意を決して言った。
「じゃ、ジェットとドロイでも誘うか」
その言葉を聞いたジェットとドロイが小躍りしてビックスローの元へ駆け寄ろうとした瞬間。

「あ、いたいた!ジェット、ドロイ。仕事だよ」
「レビィ!!」
「仕事って?」
「明日から泊まりなんだけど、報酬がいいんだ」
「明日から泊まり!?」
「なんだよ、不服か?せっかく俺がレビィを貸してやろうとしてんのによ」
レビィの後方では、ガジルが眉間にしわを寄せ、仁王立ちしながら二人を見下ろしていた。
「不服なわけ…ねぇじゃねぇか。なあ…ドロイ…」
「オ、オウ」
ジェットとドロイは、かつて一度もなかったことだが、はじめて残念そうな顔でレビィを見つめた。


「どうやら、ジェットとドロイもダメみたいね」
エバが眼鏡を正しながらつぶやいた。
「だな。マックスとナブでも誘うか」
ビックスローが大きく伸びをしながら言う。
「いいんじゃない。二人ともヒマそうだし」
エバの隣では、エルフマンが少し冷めたコーヒーを飲んでいた。


こうして、ジェットとドロイは合コンに参加できないまま、今はしっかり「ガジルの」レビィとともに、仕事の準備をするのだった。


「アスカぁ、おかえり〜」
ラクサスの肩の上にいる娘に向かって、ビスカが声をかけた。
「いいの、買ってもらえた?」
「うん」
ラクサスはアスカを下ろすと、アルザックに手渡した。
「アスカはさすがにイイ目してんぞ」
「なんのことだ?」
「なんてったってMAX2012だぜ…」


こうして、ギルドの日常はつづいていく。



合コン篇、完結!

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