story W(他CP)

□ぶどう狩り(スティユキ&ローグ)
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☆妄想SS「ぶどう狩り」前篇


(出演・ガジル、レビィ、スティング、ユキノ、ローグ、レクター、フロー)
設定:ガジレビは夫婦。
   スティング以下『剣咬の虎』のメンバーはギルドとは全く無関係の設定。年齢も低め。


ドラゴンの森のはずれには、野生のぶどう畑があった。
ガジルとレビィはこの秋になってそれを見つけたのだ。
「なんでも生えてるね、この森」
「アア。エバンス家の庭師が植えたのか、勝手に生えたのか、わかんねェがな」
「今度、ケイトさんに会ったら聞いてみようよ。ジェームズさんでも知ってるかもね」
「ちげェねェ」
(注:ケイトさんとジェームズさん『ドラゴンの館』『my honey』などに登場。他にも出てきます(^^ゞ)


さっきまでリビングの暖炉の前でガジル大きな身体にもたれながら、本を読んでいたレビィだったが、気分転換に二人で散歩に出かけることにしたのだ。


「そろそろぶどうも食べごろかな」
「もいで帰るか」
「そうだね」
ガジルがぶどうの房に手をのばしたとき。
ガサガサガサガサ・・・
「わああああ〜!!」
近くの森で、人の声がした。
「くじいたか?」
誰かが足でも踏み外し、そのそばに誰かいるらしい。


「行ってみる?」
「オウ」
一応このあたりはレッドフォックス家の敷地の森だ。
といっても厳密な境界線など引いていないので、森のはずれから迷い込んでくる人間がいてもおかしくはない。
しかしけっこう深い森なので、屋敷の入り口から伸びた道からしか森へ入るなど不可能に近いのだが。


滅竜魔導士の嗅覚で、人の気配へと近づくと、そこには、少年が二人、少女が一人、そして子猫が二匹いた。
「わあ!」
少年たちはガジルが現れたことに驚きを隠せない。
「お前ら、どっからきたんだ?こんなとこで何してんだ?」
「どこって、村の方からだよ」
「村?マグノリアのはずれか?」
「うん。オレはスティング。こっちはローグとユキノ」
ユキノ、と紹介されたショートヘアの少女がぺこりと頭を下げた。
その白い手はどうやらくじいたらしいスティングの足をさすっている。
ローグという名の黒髪の少年は、ガジルをじーっと見つめていた。
ユキノと共にスティングのそばには赤茶色と緑色の子猫が寄り添っている。
「この森、アンタの森なのか?」
「屋敷にくっついてきた森だ」
「・・・めちゃめちゃ金持ちなんだな」
「俺じゃなくて元の屋敷の持ち主が金持ちだったンだよ。ンなことより、さっきの質問に答えろ」
「ぶどう狩りをしていたんです」
ユキノがスティングの代わりに答えた。
「この森が人の森だって知らなくて。ぶどうのイイ香りがするからきてみたら、たくさんなっていたので・・・つい」
「それで、ずっこけちゃったの?」
レビィがにこにこ笑って尋ねると、三人は顔を見合わせた。
「スティングくん、足はだいじょうぶ?」
「平気」
スティングはユキノの肩に手をかけて、立ち上がった。
「イテテ・・・」
ガジルがフンとあしらった。
「家で湿布でも巻いて帰るか?」
「だいじょうぶだよ」
「そっちのローグ。コイツをおぶってやれ」
「え?ああ」
ガジルに呼ばれたローグがハッとする。
「ウチにもね、丸耳の黒猫がいるんだよ。普段はかわいいんだけど、変身したらおっきくなっちゃうの」
「そんな説明したって、わかるかよ?」
「伝わらないかなぁ〜。でも、見ためは黒猫だけど、ちゃんと話もできるし空も飛べるんだよ」
「それってエクシードですか?」
ユキノがそう口にした。
「知ってンのか?」
「本で読んだことがあります」
「今日はね、ギルドに出かけちゃってて留守なんだけど」
「ギルド?あ、それも本に書いてました」
ユキノがそう付け加えた。




つづく
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☆妄想SS「ぶどう狩り」後篇




結局、スティングはドラゴンの館で足の応急処置をすることになった。
「あ、じゃあ、ちょっと待って」
レビィが持ってきたかごに、いくつか形のいいぶどうの房を入れた。
家に戻る前にぶどうをもいでおこうと考えたのだ。
レビィはそれを見ていたユキノに声をかけた。
「もちろん、取って帰っていいよ。ハサミ使う?」
「あ、ありがとうございます」
先ほどの説明によると、ぶどうの香りに誘われて森に迷い込んだらしい三人は、ぶどうを入れるかごなど持ち合わせていない。
ユキノはぶどうを二つだけ取った。
ローグの分と、スティングと自分の分だ。
「なんだよ、二つで足りンのか?遠慮すンなよ。自生のぶどうだ。味も保障しねェしな」
気前よくガジルがぶどうを勧めると、
「さっき食べたら甘かった」
ローグがぼそりと言った。
「そうか」
ガジルがギヒッと笑うと、白い牙が現れた。
その牙を見て、ローグがぎょっとする。
え?牙?この人、吸血鬼かなんかなのか?
「そっか。かごを持ってないんだもんね。いいよ、後で私がもいだのをお土産に持って帰ったら」
突然自分の屋敷の敷地の森に迷い込んで、勝手にぶどうまで取ろうとしていた自分たちを、迷惑がって怒ることもなく接するガジルとレビィに三人は親しみを抱いた。
なんか、この大人たちはいい人のような気がする。

「ねぇ、さっき言ってたエクシードのことは何の本で読んだの?」
「『マグノリアの歴史』です」
「歴史?」
「ハイ」
「どんな年代の?」
「700年代後半から800年代にかけて、滅竜魔導士と行動を共にしたエクシードっていう部族がいたって」
「800年代にかけてって、今、何年代なの?」
「977年ですけど?」
「ええ!?きゃあ〜!!」
「レビィ!!」
ユキノの話に驚いたレビィが足を滑らせた。
ぶどう畑は斜面になっていて、レビィはコロコロところがってしまった。
ガジルが追いかけて、レビィを抱きかかえて止まった。
「大丈夫か?」
「う、うん。ガジルは?」
「問題ねェ」
「あれ!?」
「は?」
見上げたぶどう畑には誰もいない。
さっきまでいた三人と二匹の姿も見当たらない。
「やだ〜さっきの子たちは?夢?」
「俺も一緒にいたんだぞ?」
「「・・・」」


残されたスティングたちが目にしたのは。
レビィがコロコロところがっていくのを追いかけたガジルは、そのままレビィを抱きかかえるとふっと消えてしまったのだ。
「「「!!」」」
「み、見た?」
「見た!」
三人が顔を見合わせた。
「・・・この森にお化けが出るっていううわさ、マジだったんだな」
「お化けにしたら優しかったけど」
「そうだな」
森に秋の風が吹いた。
薄気味悪さも手伝って、三人は村に帰りたくなった。


「ついでだから、おぶって帰ってやるよ」
「お、ラッキー」
ローグの背中で、スティングが笑う。
「ユキノ、ぶどう、もう一房もいで帰れよ」
「あ」
「お前、オレと半分ずつにしょうって考えてるんだろ」
スティングの言葉にユキノが赤くなった。
「じゃあ、オレがユキノと分けるか」
ローグが割って入った。
「待て。じゃあ、オレとローグが分ける」
「・・・もう一つ、もらって帰ります」
素直にならないスティングに、ユキノがぷっとふくれた。
三人の前を二匹の子猫が先導して歩いて行った。


その日、帰ってきたリリーをつかまえてレビィが開口一番こう言った。
「おかえり、リリー!ちょっと聞いて!ついに出たの!」
「何がだ?」
「お化け!」
「オバケ?」
リリーがガジルを見やると、ガジルはさあな?というふうに両手を広げていた。




END

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さらっと読んでいただけましたか(^^ゞ
ドラゴンの森はなんでもアリなんです(笑)
この手の妄想が異常に好きな私。

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