story U 

□雨のはじまり
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その日、仕事が休みだったレビィはマグノリアの本屋さんで本を選んでいた。
レビィは最近、興味のあるドラゴンに関する本を捜していたのだ。
外は今にも雨が降り出しそうな空模様だった。

「あ、あった」
レビィは『ドラゴンの生態』という題名の本に手をのばした。
そもそも、ドラゴンがどんな生き物なのかもよく知らないし、こういうところから読んでみるのもいいかも。
今まであまり読んだことのない分野の本を手にしながら、レビィはそう自分を納得させた。
しかし、実はレビィが興味があるのは、ドラゴンではなく、ドラゴンに魔法を習ったという滅竜魔導士の方だった。
しかも、それは幼いころから一緒だった火竜ではなくて、かつて最悪の出会いをした鉄竜。

「おじさん、コレください」
「はいよ」
店主のおじいさんが、本を包みながら声をかけた。
「レビィちゃん、外は雨が降り出しそうじゃよ。傘は持っているのかね」
「ううん。でも、降ってきたら走ればなんとかなるし」
「傘を貸そうか?」
「大丈夫よ、ありがとう」
レビィは代金を払い、本をかばんに入れると、本屋さんのドアを開けた。
空は灰色の雨雲におおわれていた。
ギルドを出るときに、ミラに傘を持って行くように言われたのだが、レビィはすっかり忘れていたのだ。
あのとき、ギルドでガジルのこと考えてたら、傘のことなんてすっかり忘れちゃったんだ・・・。
ミラがせっかく忠告してくれたのに。


「急いで帰らなきゃ。降ってくるわね」
そう思いながらも、ここまで来たついでに近くにあるレビィのお気に入りのパン屋さんで、パンを買って帰ろうと考えた。
さっさと選んで、すぐ帰ろう。
レビィは大好きなチキンのサンドイッチとシナモンのドーナッツに加え、明日の朝食用にレーズン入りのロールパンを4つトレイに乗せた。
あら、このブルーベリーのベーグルもおいしそう。枝豆入りのパン?これもいいな。
と選んでいるうちに、とうとう外では雨が降り出した。
「わあ〜降ってきちゃった」
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