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□iron soul☆鉄の魂
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ガジルとレビィが結婚してから、しばらくたったある日。
仲良くギルドに出勤してきた、レッドフォックス夫妻の元にミラが一枚の依頼書を持ってきた。
「コレ、ガジル指定の依頼なの」
「アァ?またかよ」(『ドラゴンの館』参照)
「うふふ。今回のは、ガジル個人を指定してるんじゃなくて、鉄に詳しい魔導士っていう指定なんだけどね」
「鉄?」
「はい、コレ」
渡された依頼書に一緒に目を通す二人を、ほほえましく思いながら、ミラはカウンターへと仕事に戻って行った。
「鉄の目利き。当方の所有する鉄の板をドラゴンのうろこかどうか鑑定できる方」
「ガジル、コレって!」
「マジかよ」
鉄のドラゴンのうろこなど、そうあちこちにあるものではない、とても珍しいものだ。
鉄のドラゴン自体、ガジルもメタリカーナ以外に存在すら知らないので、
このうろこがもし本物なら、メタリカーナのものかもしれない。
レビィにはガジルの赤い瞳がまるで燃えるようにいっそう赤く輝いたように見えた。
ガジルは一刻も早く、依頼主のところへ行きたい衝動にかられた。
しかし、これまでの経験がガジルに冷静さを取り戻させた。
「・・・ガセネタかもしれねェ」
「行って確かめるしかないよ」
「そうだな」
「わ、私も一緒に行ってもいい?」
レビィが遠慮がちに、しかし強い意志をした瞳でガジルを見つめて言った。
「一緒に・・・行ってくれンのか」
思いがけないガジルの返事にレビィの胸は締め付けられた。
ああ、自分はこの人の妻になったのだ、そんな実感がほとばしった。
「うん。一緒に行きたい」
レビィは明るい笑顔で答えた。

こうして、レッドフォックス夫妻は結婚後初めて一緒に仕事に行くことになったのだった。
いつも夫妻と一緒に暮らすリリーですら、レビィと一緒に仕事に行く新鮮さに喜びを隠せなかった。
「まるで、少し遅れた結婚祝いのようなタイミングで舞い込んだ仕事だな」
リリーはそう言って、レビィの同行に華を添えた。
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