story U 

□桜舞う・・・
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約200年ほど前のマグノリア。
それまで人々を統治してきたバクフという剣士の時代が終わり、
新たに魔導士の力が台頭する世の中となってきたころ。
季節は3月の終わり。
屋敷の自室で、眠りについていたれみは夢を見ていた。

黒髪を一つに束ねた、すらりと長身の少年が竹刀の先を肩に乗せ、街を歩いている。
同様に竹刀をかつぎ、隣を歩いているのは、少年よりもかなり体格のよい金髪の青年。
「俺ももうすぐ、免許状がもらえる。そうなればこのかったるい稽古ともおさらばだ」
「・・・・・・」
「どうだ、うらやましいか、舵之助」
「・・・別にィ」
「俺とこうして肩を並べて、道場に通えねぇのも寂しいんだろ?」
「ハッ。せいせいすらァ」
「ハハハ・・・。相変わらず、口の悪い弟だな」
「兄貴ほどじゃねェよ」
一見して、似ても似つかぬ二人はどうやら兄弟のようであった。
「よぉ、楽斉と舵之助じゃねぇか」
「なんだ、夏之臣かよ」
そこへ、桜色の髪の毛をしたやや小柄な少年が加わった。
「相変わらず早ぇな」
「早く行かねェとジジィがうるせェんだ」
忌々しそうに、舵之助が答えた。
「ああ、ヤシマ先生はお前ぇんとこのじっちゃんの親友だかんな」
「竹馬の友だかなんだか知らねェけどよ」
頭一つ分は上の高さから二人を見下ろして、楽斉が薄笑いをうかべながら言った。
「クソかったるい稽古が終わるのはせいせいするが、お前ぇらをいたぶれなくなンのもつまんねぇな」
「ンだとぉ?楽斉、やンのか?コラァ?」
「俺はいつでも相手してやるぜ。夏、ビビってションベンもらすンじゃねぇぞ」

三人は街で評判のヤシマ道場の門下生であった。
ヤシマ道場とは当時マグノリア随一とうたわれた剣術道場で、ヤシマ一刀流という流派を名乗っていた。
多くの剣士の子弟がこの道場に通い、免許皆伝に向けて、日々稽古に励んでいたのだった。
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