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□鉄&火☆温泉騒動記
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元気な蝉の声が絶え間なく響き渡るレッドフォックス家の庭。
朝食の用意を済ませたレビィが、庭の手入れにいそしんでいる。
そこへ朝のシャワーを済ませたらしいガジルが、ハーフパンツ姿で現れた。

「よォ、朝早くからやってんだな」
「あ、ガジル、おはよ!」
「今度の休みに俺も手伝うからよ、お前ェ一人で無理すンじゃねェぞ」
「うん、ありがとう。朝早くじゃないと、日中は暑くって」
「それもそうだな」
「すぐにダイニングに戻るね。ちょっと待ってて」
「ああ」

ガジルは、つばの広い帽子をかぶって庭の手入れをしている、愛妻の後ろ姿に見惚れていた。
ちまたではドラゴンの館と呼ばれているこの広大な屋敷で、二人が新婚生活を始めてひと月が過ぎた。
ガジルは、かつて妖精の尻尾にくる以前の自分の暮らしと比べると、想像もできないほどの幸せをかみしめていた。

庭の水道で手を洗っているレビィを、まだなお呆けたように見つめるガジルに、敷地のはるか先にある屋敷の門まで新聞を取りに行っていたリリーが戻ってきて言った。
「おい、新聞だぞ」
「・・・・・・」
「おい、ガジル」
「ん?ああ、リリーか。おお、ご苦労だったな」
すでにリリーは、レビィに見惚れるガジルの姿には慣れたものだった。
それに、リリーもエクシードのもつ能力からか、この屋敷とそれを取り囲む森には、癒しの力があることを感じとっていた。
その力が屋敷を守るドラゴンによるものなのか、森に宿る精霊のものなのかはわからなかったが。
ここにいるとゆったりと時が流れ、あちこちに咲き誇る花々の芳しい香りと森の緑の空気が、一日の疲れを癒してくれるのだった。
とにかくも、三人はこのドラゴンの館で落ち着いた幸せな日々を送っていたのである。

「今回の仕事は一週間くらいかかちゃうのかな」
ダイニングでレビィが紅茶を入れながら、夫であるガジルに問う。
「そんなにかけるつもりはねェんだがな」
「現地に着くまでに丸二日はかかちゃうでしょ?」
レビィがガジルに紅茶のカップを勧め、リリーのカップにはなみなみとミルクを注いだ。
「不便なトコみてェだしな」
ガジルが幸せそうにレビィの紅茶を味わっているときだった。
「山を三つくらい越えるらしいよ」
そこへ、庭に開け放たれた大きな窓からハッピーがやってきた。
「!」
ガジルが紅茶をこぼしそうになっていると、
「いよぉ、新婚さん!俺たちも朝ごはんにまぜてくれよ」
さらに続いてナツがやってきた。
「なんだよ!お前ェら!」
「あぁ?これからいっしょに仕事行くんで、迎えに来てやったんだよ」
「おはよう、ナツ。いらっしゃい、ハッピー」
レビィは驚きもせず、二人の分の食器を取りに行った。
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