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□時を紡ぐ恋人たち
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「妖精の尻尾」があった時代よりも、はるか200年ほど前のマグノリア。
当時、魔導士などどいう職業はなく、人々はバクフと呼ばれる武力集団に仕える暮らしを強いられていた。
外からの脅威が起こりうれば、バクフ直属の帯刀を許された剣士と呼ばれる立場の者が武力をもって人々を守る代わりに、
人々は食糧や金塊をバクフにおさめるのが習わしだったのだ。
そんな中、人々の中には、バクフを崩壊させ、武力によらない新しいマグノリアを作ろうという動きがでてきたのだった。


とはいえ、この時代のマグノリアは、時代の転換期にさしかかろうとも、どこかのどかな街の風景を呈していた。
街のあちこちにあるそば屋や茶店では、仕事のひと時を過ごす人々が、あちらこちらでこの街の将来について語っていた。

「この間、隣の村から入ってきた奴の話じゃ、あっちには魔導士っていう新しい力をもった奴らが出てきたらしいぜ」
「なんだよ、その魔導士って?」
「生まれたときから身体ん中に魔力をもっててよ、いろんな技で戦ったり、なんか作ったり、できるんだとよ」
「へぇ。便利なもんだな」
「それで、その魔導士も金さえ払えや面倒な仕事も引き受けてくれるらしくてよ。
その力を誇示して、弱いもんをおさめようってわけじゃあねぇらしい」
「よくできた話じゃねぇか」
「そうだよ。この街のバクフとは違うわな」
「今にバクフだって、誰かにつぶされちまわぁな」
「しっ!やべぇ、剣精組だ」

茶店でバクフの独裁を嘆いていた男の隣の長椅子に、一人の男が腰を下ろした。
腰まで届く黒い長髪を一つに結び、額には鉄板を縫い付けたらしい鉢巻きを巻いている。
あさぎ色の羽織の背中には「剣」の文字。
剣精組とは、バクフ直属の剣士の集団で、おもに街の治安を守る働きを担っていた。
男は長身に合わせた長丈の刀を大事そうに腰から抜いて、長椅子に置いた。

「いらっしゃいませ」
すぐさま、店の奥からお茶の支度をした青い髪の少女が歩み寄った。
「・・・」
男は何も言わず、少女の方を見向きもせず、置かれた湯呑を口元へ運ぶ。
眼光はゆるぎなく鋭く、常に周囲をとらえていた。
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