小説(短編)
□永遠の口付け
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男の子『どうして泣いてるの?ねぇ、君は人魚なの?』
〔こうして、渚で出会った若者と美しい娘は、恋に落ちました。
娘の穏やかな海のような瞳は、言葉よりもあくさんのことを語っているようでしょう。〕
【なんて、いい話しなんだろ〜う!!いいなぁ〜。こういう恋愛。】
ここは、立海大附属の病院。
俺、幸村精市は病室で仲良くなって付き合う事になった彼女と一緒にいる。
彼女も、俺と同じで重い病気を持っている。
俺より前からこの病院に入院しているらしい。
今、俺はその彼女のおとぎ話を聞いている。
そう、俺の彼女はおとぎ話が大好きなんだ。
−病室。
【ねぇ、精市。】
「うん?なんだい。姫」
【こういう恋愛良くない?人魚姫みたいな。甘〜い恋。】
「俺と姫はいつでも甘〜い恋してるじゃん。」
【そうだけど・・・・。いつ、この世から先に私がいなくなったら・・・。】
「俺は、君が長く生きてくれる事が一番の願い。」
【でも・・・・】
「それに、2人が長く生きられて、結婚をして二人の子供を作れたら良いなぁ。」
【精市・・・///】
「続き、読んで?」
【うん♪】
彼女は、続きを読み始めた。
男の子『娘は人魚だから、人間の姿の時は、声が出ない。』
〔心ない村人にそのことを暴かれてしまった人魚の娘は、海に帰らなければなりませんでした。二人は、さよならの変わりに口づけを交わしました。
この海で、いつかまた、逢えることを信じて。
〕
〔若者は来る日も来る日も海を眺めて過しました。
そして、とうとう決心して、月夜に舟を漕ぎ出しました。
“若者が帰ることは二度とありませんでした。”〕
【・・・・だって・・・・。】
「・・・・・。」
【さっきの話し。泣ける・・・・。これをね、精市が居ないときに読んじゃうんだ。退院した時、もう逢えないのかとか、検査しにいってるときも考えちゃう。】
「・・・・姫。」
【アハハ。ごめん・・・変な話をして。さぁ、これから何をする?あ、そろそろ、部活が終ったから皆くる時間かな?】
「・・・・姫。」
【何?】
−−−−チュッ。
精市にキスされた。
私の方に乗ってる手が震えていた。
「・・・・俺も不安なんだ。一番大事にしてる人を失いそうで。
自分の身体よりも、今傍にいるやつが俺の目の前から突然いなくなってしまったらって考える。部活の仲間もそうだけど、やっぱり俺には、姫がいないといけない。」
そう言って、精市は私のベットに軽く押し倒した。
涙目になってる精市、私は、優しく彼を抱きしめた。
【・・・私は、精市から絶対に離れないから安心して。だから、精市も私から離れないでね。約束だから。】
「あぁ、約束」
俺・私達は、甘い口付けを交わした。
“永遠の口付け”