□形見
1ページ/2ページ
「ねぇねぇ!!お父さん!!これちょーだい」
「あぁん?」
なまえが目をキラキラと輝かせながら指を指しているのは、俺の愛用のギブソンのレスポールカスタム。いくら可愛い娘と言えどコレは譲る訳にはいかん…
「だめ」
「えー」
「えーってお前…。この間も一本やったやろ。」
「もらったけどさー。それも欲しい」
なんて我が儘なガキなんだ…
「駄目なもんは駄目。大体お前にはまだ早いわ」
「じゃあ、いつくれるの!?」
いつ…!?いや…コイツにコレを譲る気は当分ない。具体的にいつと言われてもコレばかりは返答に困る。
「…そうやな…。俺が死んだら…お前にやってもいいよ。」
「…お父さんが死んだら…?」
「うん。俺が死んだら。」
「形見??」
「まぁ。そういうことやな。」
その後しばらく流れた沈黙を破ったのはなまえだった。
「…早く死んじゃえ。」
えぇっ…!!
コイツとんでもないこといいよった!!
小さい声でポソッと言いやがった…!!
やべぇな。
こりゃ久々にダメージがでかいな。
あっ…。なんか泣きそうかも…。
「…ふはっ(笑)冗談冗談(笑)!なんて顔してんの!!」
「なっ…おまっ…!!」
俺はそんな酷い顔しよったんか。そりゃそうだ。コイツから死ねなんて言葉が出てくるなんて予想外すぎた。反抗期なんかも特になかったし、本当に可愛らしい、目に入れても痛くないかと言われたら痛いけど。とにかく、よく出来た娘なのだ。
「本当に冗談だから(笑)安心してよ!」
しばらく娘が信用できなくなった民生パパであった。