形見
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「ねぇねぇ!!お父さん!!これちょーだい」
「あぁん?」

なまえが目をキラキラと輝かせながら指を指しているのは、俺の愛用のギブソンのレスポールカスタム。いくら可愛い娘と言えどコレは譲る訳にはいかん…

「だめ」


「えー」


「えーってお前…。この間も一本やったやろ。」

「もらったけどさー。それも欲しい」


なんて我が儘なガキなんだ…


「駄目なもんは駄目。大体お前にはまだ早いわ」


「じゃあ、いつくれるの!?」


いつ…!?いや…コイツにコレを譲る気は当分ない。具体的にいつと言われてもコレばかりは返答に困る。


「…そうやな…。俺が死んだら…お前にやってもいいよ。」


「…お父さんが死んだら…?」

「うん。俺が死んだら。」

「形見??」

「まぁ。そういうことやな。」


その後しばらく流れた沈黙を破ったのはなまえだった。




「…早く死んじゃえ。」



えぇっ…!!
コイツとんでもないこといいよった!!
小さい声でポソッと言いやがった…!!
やべぇな。
こりゃ久々にダメージがでかいな。
あっ…。なんか泣きそうかも…。



「…ふはっ(笑)冗談冗談(笑)!なんて顔してんの!!」

「なっ…おまっ…!!」
俺はそんな酷い顔しよったんか。そりゃそうだ。コイツから死ねなんて言葉が出てくるなんて予想外すぎた。反抗期なんかも特になかったし、本当に可愛らしい、目に入れても痛くないかと言われたら痛いけど。とにかく、よく出来た娘なのだ。


「本当に冗談だから(笑)安心してよ!」



しばらく娘が信用できなくなった民生パパであった。
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