(文)

□流星群
1ページ/1ページ

星だ。
空に輝く無数の星。
「本当に今夜なのか?」
声にする度、白い息が風に流れる。
「あぁ、間違えない」
雲一つ無い関東の空は、前日降った雨のお陰で空気も澄み、空というスクリーンに無数の星を映し出す。
「全く見えんぞ」
夜も更けた秋の空、繋いだ手だけが温かく。
「焦るな。夜はまだ長い」
空いた片手は、コートのポケットに握り締める。
「蓮二。もう直ぐ……」
「言うな」
やがて訪れる冬を思おうとすろと、蓮二は必ずそれを止める。
「それは言わない約束の筈だ」
お互い違う道に進む。
「そう、だったな」
別れの時が、近付く。
「……まだ、星は降らない、か」
言葉にして空を見上げる。
見上げた空に、無数の星。
「蓮二……」
見付けた一筋の星は、焼き付いて離れない。
「星だ」
指差す方向に星は流れる。
何度も、何度も。
「綺麗だな。……蓮二?」
返って来ない返答に、空から視線を放す。暗闇に慣れた目に、蓮二の横顔が映る。
星より綺麗な一筋の、涙。
「ど、どうしたのだ!何故泣いているのだ!」
「……綺麗、だな」
「……。……あぁ」
自分で拭った涙を、ポケットへ入れ、蓮二は再び空を見る。
「星が。星が欲しいな」
星と一緒に零れた言葉。
「あれを、か?」
「そうだ。あれを捕まえて、お前を乗せて、何処までも一緒に……」
「ならば行くな!」
何処までも一緒にと言うのなら。
「高校など、何処にでもあるであろう!」
永遠に寄り添っていたい。
「……それは、出来ない」
だがそれは。
「俺にも夢がある」
夢を諦める事で。
「だが、覚えておいてくれ」
悲しい現実が見えた。
「この柳蓮二。一生お前を愛し続けると」
甘い言葉。
蓮二の瞳は、星のように美しい。
「そしていつか、必ず迎えに来る」
口角を上げて笑って見せた。
「待つばかりは、性に合わんのだ」
星のような愛を、与え合えるのならば。
「会いに行こう」
何億光年離れたとしても。
この、流星群に乗って。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ