(文)

□形勢逆転……?
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長い睫毛が綺麗。切れ長の目が美しい。さらさらと流れるような髪に触れたい。そんな事を思う。まるで病気の様に愛おしい。柳蓮二が、愛おしい。
きっと、間が持たなかったんだ。
ある日、蓮二に精一杯この思いの丈を告げると、蓮二は、頬を紅くして俺の気持ちに答えてくれた。
「有難う、弦一郎。嬉しいよ……」
こんなに至極嬉しいことは生まれて初めてだった。そしてなによりも、これから先、この柳蓮二という存在を守りたいと思った。
「そうだ、弦一郎。頼みがあるんだが」
「……何だ?」
「キスをしよう」
初めてのことで胸が高鳴る。蓮二は、初めてではないかもしれないが、初めての。しかしここで引いては男がすたる。告白したのは、こちらが先だからだ。肩に手を添え、目を閉じている蓮二に、俺は顔を近付けた。互いの唇が触れた瞬間、蓮二がいつも持ち歩いている匂い袋の香りが鼻の奥を掠めた。触れるだけのキスをして顔を離そうとした。にも関わらず、それは、後ろに回された蓮二の手に邪魔される。触れた唇を、離すことが出来ない。
「…ふ、んっ」
嫌らしく漏れた息に、顔が熱くなった。その時触れた蓮二の舌。無理矢理に俺の唇を抉じ開けようとするそれに驚き、顔を背けようとするが、蓮二の手は、それ許す気配が無い。こんなにも長いキス。息の仕方が分からず、窒息しそうになる。耐えきれず、口を大きく開けて酸素を吸い込んだ。それは脳を巡り、息苦しさから解放され、思考がはっきりしてくる。
「しまっ――っ!」
刹那、再び思考が停止する。あっさりと口内に侵入してきた蓮二の舌に、口内をなぞるように嘗め取られる。舌と舌が重なり合い、その音だけが耳の奥に響く。
「っ……ふっ……」
漏れる息に力が抜け、口が離れた瞬間崩れ落ちる。
「どうだった?」
目線を合わせ、問う蓮二は、笑っていた。右手で自分の口を覆い、大きく息を吐く。
「み、猥りがわしい……」
言うと、蓮二は、口を覆う右の手の甲に唇を落とす。手越しに触れられた唇に、身体が熱くなった。
「乱り顔。愛してるよ、弦一郎」

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