(文)

□勝手心中
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殺してしまいたいくらい愛おしいのに、この思いが、届く事はない。


「蓮二」
話を聞こう。
「幸村の誕生日に、何をやれば喜ぶと思う?」
前言撤回。
「やはり花だろうか?幸村には、花が似合うと思わないか?」
お前は、俺の気持ちも知らないで、二言目には幸村、幸村と、笑顔で話出すのだ。
本当に、殺してしまいたいよ。
そうすれば、人形の様にいつまでも側に置いておけると言うのに。
「なぁ、蓮二。どう思う?」
その楽しげな顔が愛おしくて、殺すことさえも惜しくなる。
「良いアイディアではないのか?花……」
「やはり、そう思うか?」
ならば。
「あぁ……」
いっそのこと。
「助かったぞ、蓮二」
全て。
「礼を言う」
壊してしまおうか。
「礼などは要らない……」
壁に勢い良く弦一郎を抑え付け「変わりに、お前が欲しい」と強引に口付ける。もがき、逃げようとするのを許さない。
涙を流した弦一郎を見たとき思った。
このまま口を塞いでいれば、そのとき弦一郎は死ぬだろうか。そのときは、俺も死ぬか、と。
有り得ないが、もしそれが、本当に有り得ることだとするならば、これは勝手な心中だな。

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