(文)

□動けない
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二人で借りたリビングに、弦一郎が半裸の状態で倒れていた。脱ぎ捨てられた服と、テーブルに置かれた二つのコップと大量の空き缶。それに、置き手紙が一つ。紙を手に取る。そこには“俺の酒を間違って一気に飲んで倒れとる。後は頼んだ。仁王”と書かれていた。
「……寝ているのか」
無造作に倒れ込んでいる弦一郎は起きる気配がない。
突如震え出す電話。ポケットから携帯を取り出し耳に当てる。
「柳だ」
「参謀?仁王じゃ」
「あぁ。未成年の飲酒は法律で禁止されているのだが?」
痛みに漬け込む。
「細かいこと言いなさんな。俺だって大変だったんじゃ」
「それは、すまなかったな」
肩と顔の間に携帯を挟みながら部屋に合ったタオルケットを掛けると、寝返りを打った。
「まぁ半分は俺のせいじゃからな……。取り敢えず寝たから放って置いたんじゃが、まだ寝とるんか?」
「あぁ」
気持ち良さそうに寝ている。
「あんな酒に弱いとは思わんかったよ。ま、参謀が居るなら大丈夫だろ」
「あぁ」
「ならな」
短い言葉を残して、電話は切れる。
前髪を撫でると、少しだけ笑ったような気がした。
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