(文)

□次の日の朝
1ページ/1ページ

午前四時。いきなり真田に叩き起こされる。
「……」
無視して布団をかぶると、引き剥がされた。
「なんじゃ真田……」
「起きんか仁王!鍛錬の時間だ!」
開かない目を枕に伏せると、真田の匂いがした。
「仁王!」
「俺が朝弱いの、知っとるじゃろ……?」
「知ってはいるが、言い訳に過ぎん!」
「鬼か……」
枕を抱えた両腕に力を入れ、更に枕を抱える。頬に当たった肩が冷たい。
起きたくない意思表示。
それも、真田には通じなかったらしい。
一度取り上げられた布団が半分かけられたと思ったら、上に覆い被さられる様な感じがした。真田が居る反対に右腕が見えた。
瞬間、耳に違和感。
舐められたのだと分かった時に、背中に寒気が走る。
「………何するんじゃ、真田」
一気に覚めてしまった目。舐められた耳に手をあてながら、軽く状態を起こした。
「起きれるではないか」
「あんなことされたら、当たり前じゃ」
顔は見えない。変わりに首もとに熱。吸われて、痕になる。
「マーキング……。どこで覚えて来るんや?」
「さぁな」
言って倒れ込む音。顔を向けると、隣に寝転ぶ真田が居た。
「鍛錬は……?」
「休みにする。たまにはいいだろう」
興味がないフリをして、そっぽを向く。
本当は、少し嬉しい。
「お前が居るときくらい、ゆっくりしよう」
向けた背中に抱きつかれる。回された腕。指先が少し厭らしい。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ