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□成長は組『結婚生活どんなんですか?』
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一番、福富しんべヱのばやい



カチャンッ



『あ、っつ』

「どうかしたの?」

『ごめんなさい、鍋に触っちゃって熱かっただけなの』



仕事の邪魔してごめんね、と謝りそのまま作業を続行しようとした。
だが、それを制したのはしんべヱだ。



『え、あの…』

「やけどしてるんじゃないの?ちゃんと冷やさなくちゃ!」

『大丈夫だよ。ほら、早く夕飯の支度しなくちゃでしょ』

「それよりも君の方が心配だよ。せっかくのご飯だって美味しくなくなっちゃう」



いつもは垂れてる眉をつり上げ心配と怒ってくれる。
こんな嬉しいこと、彼以外ではないことだろう。

ジャー、と流れる冷たい水。
指だけでなく手全体を濡らし、しんべヱはタオルでポンポンと優しく拭いてくれた。



「ちょっと水膨れになっちゃったかなー」

『これくらい慣れっこだよ。ありがとね、しんべヱ』

「僕が鍋にしたいって言ったからだよね、ごめんね」



いつも自分の食べたい物を主張するしんべヱ。
それが当たり前で、謝るなんてこと、今までなかった。

しょんぼりするしんべヱと目線を合わせおでこを合わせた。
ごつっといい音がしてうわっ、しんべヱが数歩後退した。



『勝手に謝んないの。別に怒ってないじゃない』

「でも…」

『でもじゃないー。せっかくの鍋なんだからみんなで食べなきゃつまんないよ』



私の手を握ってくれるしんべヱの手は大きい。
この手で、これから先お義父さんの跡を継いで大きくしていく。



「しんべヱと一緒にいれば、何でも楽しいよ?」



しんべヱは?と尋ねればへらり、彼は頬を緩ませた。
優しい、優しい彼は何でもかんでも優しい言葉をくれる。



「楽しいよ。奥さんになってくれて、僕の側にいてくれてありがとう」



誰かが言った、なんでしんべヱと結婚すんだよと。金目的?なんて言葉も。
だけどその人は知らないんだ。

彼がこんなに優しくて、男前なことを。



『一生着いていきますよ、私はあなた以外に愛せませんから』



同じように笑って、額をこつんと当ててまた笑った。
少し赤い頬も、その笑顔も私は大好きなんだ。

プロポーズの言葉?
もちろん、



「これからも、僕のご飯を作ってください!」



それに甘いキスを加えて。







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