ホウタイ・ドラゴン

□第ニ章/薬とホームレス少女
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ドサッ

手からバックが落ちる。

「おい、嘘だろ!」

龍雅は少女に近づき膝まづく。

「おい!大丈夫か!おい!」

龍雅は全裸の少女に自分の学ランを着せる。少女は両手を鎖に縛られ、立ち膝状態で気絶している。

「くそっ、誰だよこんなことしたの!」

辺りを見渡すが、誰も見当たらない。たぶん犯人はどこかに行ったんだろう。鎖に縛られている少女の後ろの方に、タバコの吸い殻が数本あり、何本かはうっすらと煙が立ってるのが見える。

「まだ近くにいるかも…。」

龍雅は立ち上がり犯人を探そうとするが、少女から出ている血を見て立ち止まる。

「ちくしょっ!出血が多い。早く治療しないと!」

龍雅は急いで自分のバックを拾いバックを開ける。

「…ダメだ、このバックに入ってる物だけじゃ治療できない…。」

どうする…。救急車を呼ぶか?ダメだここから病院は遠すぎる。一度家に戻って足りない物を持ってくるか?いやでも、ここで治療したら犯人が戻って来るかもしれない。

龍雅はグッタリと吊されている少女を見ながら考える。

「ええぃ!」

龍雅は少女が繋がれてる鎖を外しだす。両方とも取り外すと、龍雅は少女を背負い歩きだす。

早くここから逃げないと…。

龍雅が少女を背負い逃げようとすると、あるものが目に入る。

「…SPIRIT…。」

何故今まで気づかなかったんだろう…。

少女が吊されていた後ろの壁には、カラースプレーで大きく[SPIRIT]とかかれていた。

「SPIRITって奴らがやったのか?」

少女を押さえている龍雅の手が強く握られる。龍雅は1分ぐらい壁を睨んでいたが、少女のことに気づき急いで歩きだす。

[SPIRIT]…。どこの組だよ。聞いた時ないぞ、新しい組か?

ふと気づくと頭から血が流れる。だが、龍雅ではなく、少女の血が…。

龍雅は自分が背負っている少女を見る。

…。苦しそうだ。

気絶している少女だが汗をかきながら苦しそうな顔をしている。少女が着ている学ランは血がにじみ、龍雅のワイシャツにまで血で染まっている。

「…、急がないと。」

龍雅は坂を駆け上がり、背中から落ちそうな少女を背負い治す。

頑張れよ…。

龍雅が橋から少し離れた所で神は追い討ちをかける。

パラパラパラ

「雨…か。」

あの日も、雨だったな…。

龍雅は少女を背負ったまま思い出す…。

「正人…。」





「アハハハハハッ!」
「でよ〜、[SPIRIT]っ言ったら怯えてすんなり金くれたよ!」
「マジでっ!?」
「ダッセーッ!」

ある橋の上を三人の不良達が笑いながら歩いている。何処かで買物をして来たのだろ〜、三人の手にはビニール袋を持っている。

「そういや〜、あの女誰にも見つかってねぇ〜よな。」

三人で並んで歩いている一番右にいる丸刈りの男がつぶやく。

「大丈夫だろ、誰もこねぇだろあんなところ。俺らのたまり場だし。」

丸刈りの男の質問に答えたのは、左側にいる黒いTシャツの男。黒いTシャツの男は転がっている石ころを蹴り飛ばす。

「まぁ、見られたら見られたでボコればいいし。てか、ここら辺[SPIRIT]の縄張りだからな〜知ってるだろ俺達の事。」

と、しゃべったのはモヒカンの真ん中の男。

「てかよ、あの女。この前消えたときは冷や汗かいたぜ〜。」
「だからさ〜。桐谷さんにバレてたら今頃…。」
「あの女の管理俺達だからな〜。めんどくせ〜けど…。」

三人の不良は顔を見合わせると大きく笑い出した。

『アハハハハ!』

「あの女、ヒーヒー言いやがって。」
「だからさ!管理させられる代わりに、好きにしていいとかマジ最高〜。」
「あの女マジ最高!もっかいやっちまおうぜ!」

三人の不良達は橋を渡りきるとそのまま坂を下りた。

「る〜り〜ちゃん♪」

丸刈りの男が少女の名前らしきことを言いながら橋の下へと走っていった。

「アハハ。あいつ張り切りすぎだろ。」

黒いTシャツとモヒカンの男が、それを見て笑う。だが、

「お、おいっ!」
「どうした。」

さっき張り切って走っていった男が戻ってきた。冷や汗をかきながら…。

「いねぇんだよ!女が!」
「はぁっ!いねぇってどうゆうことだよ!?」

丸刈りの男が言ったことを聞き、二人の表情がいっぺんする。

「お前それマジで言ってんのか?」
「マジだよ、見て確かめろよ!」

三人は慌てて橋の下に行くと、

「う、嘘だろ…。」

そこには鎖で繋がれているはずの少女が消えていた。

「おいおい、またかよ。」
「何でだよ、また逃げ出さないように鎖まで付けたのに…。」
「あの女、どうやって鎖を外した!」

男達はその場を見て目を丸くする。少女がいたはずの場所には、強引にちぎれた鎖が無残に転がっている。
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