小説置き場
□恋人ごっこ
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―――1週間の恋人ごっこ。
すべては此処から始まった―――
恋人ごっこ
〜はじまり〜
「圭、また見てんのー?」
「んー」
目線の先には、数人の女友達に囲まれて楽しそうに笑っている
俺のあこがれの先輩――白井 加奈子。
少し肌寒いのか、腕をさすっている。
「もうすぐ卒業じゃん」
「…」
「告白、いつすんの?」
「…」
もうすぐ3月。
あと3週間ほどで、白井先輩は卒業してしまう。
俺、―矢森 圭―は焦っていた。
「…卒業、かぁ」
いっそ、3月なんて来なければいい。
そうすれば、こうして遠くからだけど白井先輩を眺められる。
―――でも、
そういうワケにはいかないのだ。
時というものは残酷で、何があろうとどんどん経っていく。
止まりもしなければ、戻りもしない。
「ホント、どーすっかなぁ…」
ぽつり、と呟いた言葉は冷たい風に攫われた。