小説置き場

□恋人ごっこ
1ページ/30ページ





 
  ―――1週間の恋人ごっこ。

  
   すべては此処から始まった―――



 恋人ごっこ

     〜はじまり〜



「圭、また見てんのー?」
「んー」

 目線の先には、数人の女友達に囲まれて楽しそうに笑っている
俺のあこがれの先輩――白井 加奈子。
少し肌寒いのか、腕をさすっている。

「もうすぐ卒業じゃん」
「…」
「告白、いつすんの?」
「…」

 もうすぐ3月。
あと3週間ほどで、白井先輩は卒業してしまう。

 

  俺、―矢森 圭―は焦っていた。



「…卒業、かぁ」

 いっそ、3月なんて来なければいい。
そうすれば、こうして遠くからだけど白井先輩を眺められる。
 
  
 ―――でも、

 
  そういうワケにはいかないのだ。


 時というものは残酷で、何があろうとどんどん経っていく。
止まりもしなければ、戻りもしない。


「ホント、どーすっかなぁ…」


ぽつり、と呟いた言葉は冷たい風に攫われた。

  
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ