長編
□The moon is beautiful
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今思えば
告白をした時も
付き合い始めた時も
デートした時も
キスした時も
事あるごとに愛の言葉を囁いたのは俺の方で
彼の口から"愛しています""好きです"なんて言葉が出てきたことは一度としてなかった
告白をした時でさえ「はい、僕もです」という同意の言葉だけだった
だからあの時
彼の言葉に
あまりにもすんなりと納得してしまっている自分がいた
これほどまでに相手を想っているのは俺だけで
両想いだと勘違いしてはしゃぐ俺を見て、心の底で彼は嘲笑っていたのかと思うと無償にムカムカとして
八つ当たりに近い怒りをぶつけてしまった
少し言い過ぎてしまった部分もあったとは思うけれど
悪いのは向こうなのだから、謝ってやる気なんてない
だから
後悔なんて
してない
彼とはその大喧嘩をした日から
一度も会っていない