長編

□忠誠を
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京子ちゃんが話しをしてくれている間、ハルは徐々に顔を赤く染め上げながら、あぁ〜とか、はぅ〜と頬に手をあてて悶えている。

話しを聞き終わったツナは、そんなハルの様子を見てクスリと笑うとハルの頭に手を置きポンポンと優しく叩く。

「ハルってば可愛い」

そう優しい笑顔と共に言われると、きっと誰でも顔を真っ赤にさせて微動だにしないだろう。
ハルなんか顔を湯気がでるくらい真っ赤にさせて「はひっーーー!?」と言いながら気絶してしまった。

1番に驚いたのは目の前にいたツナだ。
いきなり叫んで倒れられたのだから。

「えっ、ちょっ、ハル!?大丈夫!?」

頬をペチペチと叩いてみるが起きる様子はない。
すると叫び声を聞いた獄寺がやって来て、スッとハルを抱え上げる。

「救護室に連れて行ってきます」

そう淡々と獄寺は言う。
周りの誰もが冷静な彼の判断に感心したが、ツナだけは直感的にわかった。
(あれ?すっごく動揺してる?)

誰にも分からないように少し笑う。
救護室に向かおうとする獄寺をツナは呼び止めた。

「ご……隼人!」

つい癖で獄寺君と呼びそうになって言い換える。
今会場には同盟マフィアのボスも数人いるからだ。
別に獄寺君と呼んでも何も言ってはこないだろうが、ボンゴレのボスとして威厳を保つ事を忘れてはいけないのだ。

「?何ですか?」
「あのね……」

とまで言ってからツナは獄寺にしか聞こえないように耳元で「ハルの事大事にしてあげるんだよ?」と呟いた。ちょっと意地悪な笑顔と共に。
獄寺はと言えば、ハルと同じ様に、いやそれ以上に顔を赤々とさせる。
目を大きく見開き口をパクパクさせて、満面の笑顔を向けているツナを見る。

「なっ…!!じゅ…なん…!!?」
「ほら隼人!救護室に連れて行ってあげるんだろ?早くハルを寝かせてあげなきゃ!!ハルが目を覚ました時に一人だと寂しいだろうから、付き添ってあげてね」

困惑したままの獄寺の背を押し、救護室へと送り出した。

「獄寺君に何か言ったの?」

見るからに恥ずかしさを隠すように、うろたえて扉の先に消えた獄寺の方を見ながら、京子は言った。

「ん〜。内緒」

ツナはクスクスと悪戯っぽく笑う。

「あ、京子ちゃんもハルに付いておきたかった?やっぱり心配だもんね。救護室まで案内しようか?」

「ううん。大丈夫。それにもう少し二人きりにしておいてあげたいし…。それにツッ君とももう少しお話ししたいし」

と京子はニコリと笑う。

昔からこの笑顔には救われてきたなぁ、なんて思いながら、その笑顔をしっかりと目に焼き付け、ツナは自分も笑いかける。
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