短編

□どうしよう隠し切れない
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僕は円堂君が好きだ。

心の底から愛してる。


一緒に居たいと思う
お話ししたいと思う
手を繋ぎたいと思う
キスがしたいと思う
独占したいなと思う


でも、円堂君はそうは思ってないのかな?









僕達が付き合い始めて、もう二ヶ月になる。
この二ヶ月間、至極健全なお付き合いをしてきた。


「ヒーロトッ!一緒に帰ろうぜ?」

「あ、うん!」


付き合い始めてから、よく一緒に帰るようになった。
今日あった出来事について語り合い、笑い合う。


正直、告白にOKがもらえるとは思ってなかった。
彼は僕以外からも熱烈なるアプローチを受けていたのは明白だったから。

夢にも見なかった返事が聞けて、こうやって二人だけで一緒に帰れるようになって、これほどまでに嬉しいことはない。


今の状況に不満があるわけじゃないけど、でも、
そろそろもう一歩進みたいというか……


僕達はまだ恋人同士だというのにキスをしたことがない。
というか手すら繋いでない。

健全な中学男子としては、正直、アンナコトやコンナコトと形容されることがしてみたい訳で。
あ〜あ、やっぱり



ーーキス、したいなぁーー



「へっ!?」
「え?」


隣を歩く円堂君がいきなり素っ頓狂な声をあげた。
その顔は耳まで真っ赤だ。

あれ?確かさっきまで昨日のサッカーの試合について話てたはず……

え、あれ、え、もしかして

「声に……出してた?」

そう問えば、更に顔を真っ赤にして、フルフルと震えている。
その姿は素晴らしくカワイイ。
スッゴく可愛い!!
可愛過ぎるよ円堂君!!


って、違う違う!!!!!!
そうじゃなくて!
この反応からするに、つまり……

「き、気にしないでね円堂君!!ただの独り言だから!!!!えっと、その、鱚の死体だなぁ〜って言ったんだよ?うん、そう鱚の死体!!」

我ながら痛い言い訳だったと思う。
鱚の死体って何だ。ムードもへったくれもないじゃないか。
せめてもっとマシな言い訳はなかったのだろうか。何も浮かばなかった自分の頭が憎い。


「あっ、そっか、何だ、俺の聞き間違いか…そうか、ふ〜ん……」


ワタワタとしながらも理解してくれたようで、急にシューンとした表情でそっかそっか、と頷いてくれた。

引かれなくてよかったと思う半面、チャンスを自分自身で砕いてしまった後悔が押し寄せる。
何やってんだろ、僕。

ハァ、とため息をついた時、円堂君がボソリと呟いた。

「嬉しかったんだけどなぁ……」


…………え、鱚の死体が?とか減点評価されそうなボケをかまし、その言葉の意味を考えた。
一回そんなボケでも挟まないと、嬉しすぎて頭がショートしそうだったから。


どうしよう。
これこそ聞き間違いじゃないよね?
僕の妄想からきた幻聴じゃないよね?
あーもう、ニヤニヤが止まらない。


「円堂君、あのさ」


ーーキス、してもいいですか?ーー








「円堂君、あのさ、き、きききき」
「き?」
「き、今日はイイ天気ダネ」
「…そうだな」
「………(違うだろ僕ぅぅぅ!!!!)」
「あのさ、ヒロト。手、繋いで帰らない?」
「へっ?あ、もちろん!!!!」






あとがき
変態じゃないヒロトも好きだよ←
純情な恋仲って素敵だと思います!!

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