短編
□ずっと寂しいのですが、なんとかなりませんか
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ああ
お願いだから
こっちを向いて
振り向いて
気づいてよ
アイツじゃなくて
こっちを見て
「円堂、次の試合のフォーメーションなんだが」
俺は周りに聞こえてるんじゃないかと思うぐらいドキドキと胸を高鳴らせながら声をかける。
「ん?おー、いいんじゃないか?流石鬼道だな!!」
パァッと明るい笑顔の花を咲かせて言う彼は、俺が心惹かれる円堂守である。
その笑顔を見た瞬間、心臓が爆発するんじゃないかというくらいドキリとした。
バクバクと心臓は脈打ち、ボッと顔が熱くなる。
しかし俺は平静を装う。
「いや、どうってことはない」
「そうか?俺は凄いと思うけどな〜。あ!なぁなぁ、ここはこうした方が……」
「なるほど、だが…………」
ただ作戦を考えているだけだが、こうやって二人きりで話せるこの時が、俺にとっては幸せな時間だった。
円堂はきっと何も感じてないだろうけれど。
だから
「ここのチームって守備が堅いんだよな」
ほら、また
「この前試合見に行ったんだけどさ!ゴールキーパーがスッゲェんだ!!こう、バーンてドーンって感じでさ!!」
違うヤツを誉める。
「でも、皆となら勝てるって信じてるんだ!!皆ドンドン必殺技の威力も上がってきてるし」
そして
「『豪炎寺』とか凄いんだぜ?この前だって」
ほら、またアイツの名前。
円堂はよく皆のことを誉める。
誰に対しても平等に。
勿論俺に対しても。
豪炎寺に対してもそれは変わらないのだが、若干。
若干だが他の者よりも誉める回数が多い。
とはいえ、たかが数回多いぐらいのものだ。
豪炎寺は確かにどのプレーヤーよりも優れていたから、それも必然的なことなのかもしれない。
だが、それにすら嫉妬を覚える。
本当に小さい男だと自分でも思う。
でも、仕方がないじゃないか。
それほどまでに、俺は円堂守という存在を好いているのだ。
キラキラと顔を綻ばせて豪炎寺は凄いんだ、と語る円堂は俺の表情が曇ったことに気がついていない。
ねぇ、早く気づいてよ
あとがき
円堂は無自覚で豪炎寺に興味があるだけで、まだ恋には発展しておりません。っていう風に私は考えている←
振り向かせちゃいなよ鬼道君!!