短編

□「頑張れ」無責任に私を追い詰める
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「よろしくな!円堂」
「お前にならゴールを任せられる」
「信じてるぜ!」
「頼りにしてるぞ、円堂」


『ーーおう、任せとけ!』








ワァァッと熱気と歓声で包まれたフィールドで、俺は相手と対峙していた。
世界的にも有名なこの試合で、この試合に勝てば俺達のチームは優勝できる。

いつものようにポジションについた。
いつものように
いつもと同じはずだった。


「この試合、何が何でも勝たせてもらうよ!」

真っ直ぐ相手はボールを蹴り込んでくる。
やはりプロ選手である。威力も精密さも抜群で、ゴールへと放たれた。
俺は点をとらせまいと集中する。

「ゴッドハンド!!」

神々しい光とともに放たれる神の手。
彼の象徴ともいえる技だ。
この技でたくさんのシュートを止めてきた。
観客はまた今日も止めてくれると信じてワッと盛り上がる。

だが

「え……?」

神の手は完全に姿を現すことなく消え去った。

ゴールが入ったことに歓喜の声を上げる者と、何が起こったのか分からずポカンとしている人は半々。

中でも1番驚いているのは、円堂守、本人であった。

「なんで……」

コンディションは完璧だった。
怪我をしていたわけでもない。
気分が悪かったわけでもない。
やる気がなかったわけでもない。
なのに何故ゴッドハンドは出なかった?


考えても考えても答えは出なかった。

大丈夫か?とチームメイトが駆け寄って来る。「大丈夫だ」と応えて、次のシュートに意識を向ける。

気持ちは切り替えたはずだった。
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