短編

□青い傘
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「あ、じゃあコレ使って」
「えぇ!?」
「大丈夫大丈夫!!遠慮しないで」
「いや、だってそしたら京子ちゃんはどうするの?」
「ふっふっふ。抜かりはないんだよ、ツナ君。………ジャーーン!!」


下駄箱の奥へと手を伸ばし、引っ張り出した物を見せる。
随分と埃を被っているが、それは折りたたみ傘だった。
こちらも青いがさっきのより少し淡い青だった。



「………ソレ、いつからそこに入れてたの?」
「え?うーん、確か梅雨の時期に持って来たものだから、4、5ヶ月前ぐらいかな?」
「……たまに京子ちゃんって凄いよね」
「?」


よく彼の言っている意味が分からなかったが、とりあえず傘が使える事を確認する。

「よし。ねぇツナ君、一緒に帰らない?」
「え、いいの?」
「もちろん!!」

ニッコリと笑って二人揃って歩き出す。
オレの方がソッチ(折りたたみ)使うよって言ってきたのを私はやんわりと断りながら、少し幸せな気分で過ごしていた。

彼と二人っきりで帰れて嬉しいはずなのに。
幸せなはずなのに。
ずっと警告音は鳴り響いたままーー

そのまま二人は別れることになった。

「あ、オレ家こっちだから」
「うん」
「傘、明日ちゃんと返すね。今日はありがとう」
「うん。こっちこそ、一緒に帰れて楽しかったよ。ありがとう!」
「じゃあ、また明日!バイバイ京子ちゃん!!」
「うん!また明日。また明日ね、ツナ君!!」


パシャパシャと水溜まりを駆けていく彼。
笑顔で駆けていく彼。
一度も振り返らなかった彼。
見えなくなるまで、私は彼を見つめ続けた。






翌日、約束したのに
傘が返ってくることはなかった。

そして
それ以来、私が青い傘を使うことは二度となかった。






あとがき
京子ちゃんのキャラがあまりつかめていない…
ちなみに京子→←ツナのつもり
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