短編

□私の頭の中に、あの人の声が響く
2ページ/4ページ

ーー獄寺君ーー


もう、そう呼んでは下さらないのですね。

町の子供達がマフィアの抗争に巻き込まれていると聞いて、貴方は顔色を変えて屋敷を飛び出して行きましたね。

あの時引き止めていれば貴方は死なずにすんだのですか?


子供達を避難させている途中、流れ弾が貴方に飛んでいって、避けようと思えば避けれたはずなのに……

後ろにいた子供を守る為に貴方は避けなかった。

あの時私が飛び出して貴方を庇えばよかったのに。

私は貴方の名前を叫んで、手を伸ばすだけでした。


あの時、どれほど自分の力の無さを実感したか……


目の前で大切な貴方が撃たれて。

私は大きな声で貴方の名前を呼んで。

貴方の肩から赤い液体が飛び出て。

貴方の体がバタリと倒れて。

私は貴方に駆け寄って。

庇われた女の子が泣き叫んで。

泣き声を聞いた守護者が駆け寄って来て。

部下の者が女の子を安全な所に連れていって。

山本達が貴方の怪我の止血を始めて。

皆真っ青な顔をしてて。

皆馬鹿だなって思ったんです。

そんな真っ青な顔しなくても、女の子は助かったし、十代目だって助かるに決まってるのに。

十代目がこんなコトで死ぬはずないのに。

明日には元気に「おはよう」って笑って挨拶してくれるのに。

なのに皆慌ててて。

十代目は治療室に急いで運ばれて。

山本が焦った顔して俺に何か言って来て。

でもパクパク口を動かしてるだけで。

その様子がスッゴイおかしくて。

笑ってやったら、悲しそうな顔して俺の腕を取って引っ張って行ったんだ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ