短編
□私の頭の中に、あの人の声が響く
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ーー獄寺君ーー
もう、そう呼んでは下さらないのですね。
町の子供達がマフィアの抗争に巻き込まれていると聞いて、貴方は顔色を変えて屋敷を飛び出して行きましたね。
あの時引き止めていれば貴方は死なずにすんだのですか?
子供達を避難させている途中、流れ弾が貴方に飛んでいって、避けようと思えば避けれたはずなのに……
後ろにいた子供を守る為に貴方は避けなかった。
あの時私が飛び出して貴方を庇えばよかったのに。
私は貴方の名前を叫んで、手を伸ばすだけでした。
あの時、どれほど自分の力の無さを実感したか……
目の前で大切な貴方が撃たれて。
私は大きな声で貴方の名前を呼んで。
貴方の肩から赤い液体が飛び出て。
貴方の体がバタリと倒れて。
私は貴方に駆け寄って。
庇われた女の子が泣き叫んで。
泣き声を聞いた守護者が駆け寄って来て。
部下の者が女の子を安全な所に連れていって。
山本達が貴方の怪我の止血を始めて。
皆真っ青な顔をしてて。
皆馬鹿だなって思ったんです。
そんな真っ青な顔しなくても、女の子は助かったし、十代目だって助かるに決まってるのに。
十代目がこんなコトで死ぬはずないのに。
明日には元気に「おはよう」って笑って挨拶してくれるのに。
なのに皆慌ててて。
十代目は治療室に急いで運ばれて。
山本が焦った顔して俺に何か言って来て。
でもパクパク口を動かしてるだけで。
その様子がスッゴイおかしくて。
笑ってやったら、悲しそうな顔して俺の腕を取って引っ張って行ったんだ。