短編
□そんなの嬉し過ぎるよ
2ページ/6ページ
夏目は朝起きると、歯磨きして顔洗って、そしてお気に入りのずきんを被り、お使いへと出掛けます。
今日のお使いの品は、森に住むレイコさんが食べれないようなエビやイカなどの海の幸を届ける事になっています。
「行ってきます」
と挨拶して出掛けていきます。
少し歩いていると近所の子供達に出会いました。
すると突然石を投げつけられました。
「男のくせに女みたいな赤いずきん被ってやんの」
「やーい、女男〜」
とイジメられます。
夏目は決して皆の前では泣きません。
涙を堪えて、足早に駆けていきます。
いじめっ子が見えなくなる距離まで来ると、ついに堪えきれなくなって涙を流しました。
レイコおばあちゃんの住む森に、クスンクスンと泣く声が虚しく響き渡ります。
そんな時、夏目は決まってずきんの端を掴みます。
レイコおばあちゃんが、夏目君の為だけに作ってくれたずきん。
夏目を暖かく、頭の上からいつも見守っていてくれます。
さっきだって夏目君を石から守ってくれました。
このずきんを見ると、何故だか夏目は元気がでてくるのです。
夏目君は元気な明るい笑顔をかかげて、森の道を駆けていきます。
はてさて
赤ずきんといえば、やっぱりオオカミさんですよね?
この物語のオオカミさんは、つるふかニャンコのニャンコ先生こと、斑です。
オオカミさん…ここではニャンコと呼びましょうか。
……ニャンコとオオカミは違う動物だろうって?
細かい事気にしてはいけません。
さて、夏目君が森を駆けている時、ニャンコは
(エビ………ジュルリ)
とヨダレを垂らしておりました。
……おや?
ニャンコの目の色が変わりました。
何だか悪い事を思い付いた、何ともニヤついた顔をしています。
ニャンコは目を光らせてドコカヘ走り去って行きます。
しかし、その姿は怖いオオカミさんには程遠い可愛らしいニャンコの姿です。
何か悪い事をしようとしているのでしょうが、まったく迫力がありません。
さて、何をしようとしているのやら。