短編

□死んだ魚のような
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リボーンが来てから、オレの人生設計はガラガラと綺麗に崩れさったわけだ。

普通の優しい家族のもとで、学校で勉強して友達と過ごして、社会に出て働いて、親に恩返しなんかして、ダメダメでもダメダメながらに頑張って。
別に政治家になりたいとか、医者になりたいとか、そんな大それた夢は持ってなかった。
とにかく平和に生きていきたいと思っていただけなのに。ただ、それだけなのに。

あの日から、そんな理想の将来像から掛け離れた世界に入り込んでしまったわけだ。

ズルズル、ズルズルと引きずられながら。
気が付けばボスになっていた。

ボスってね、意外に頭使うんだよ。
始めは力さえ強ければいいんだろうって思ってた。
だってさ、ザンザスとか絶対頭良さそうには見えないじゃn
ごめん、今のは聞かなかったことにして。じゃないとオレの命が危ない。

で、ボスになって書類整理とか、大勢の人に指示をだしたりとか。
とにかく頭使うんだよ。

いやぁもう、すぐにオレには合わないって思ったね。
もちろん逃げようとしたよ。
でもさ、あの家庭教師の目から逃げられると思う?

結論から言うとね



無理



うん、無理だよ。
オレ、自ら火だるまの中に突っ込んで行くような勇気持った男じゃないんだよね。残念ながら。

それでボスになってからも、まだズルズルとそのイスに座り続けてるわけだ。

でも、ね。
そろそろ限界かなぁって。

何が限界かって?


そりゃぁボスをやるのがだよ。


え、理由?
当ててみてよ。

書類整理が嫌になった?
残念。
それも嫌だけど、基本隼人に任せてr……なんて事はないけど、とにかく原因はそれじゃない。

戦うのが嫌だから?
残念。
それが原因ならもっと前から限界を感じてる。
マフィアはやっぱり抗争が多いってのは、ボスになった瞬間に学習したから。
それにね、これについては最近やっと解決し始めた所なんだ。
理由を説明しだすと長くなるから、話はまた今度ね。

他に理由がわかった人いる?

……まぁ正解を言っちゃうとね、原因は守護者の皆だよ。


あ、薄々分かってた?
うん、正解。よくわかったね。

毎日屋敷で皆がスキンシップをとるたびに(現実逃避の為にあえて二回言おう。これはスキンシップなのだ)莫大な出費をするのは目をつむります。
皆じゃれあってるだけなんだから。暖かく見守ってあげようと思う。うん、じゃれあってるだけなんだから。
こういうのは許す。


でもね。
毎日プレゼントを送ってくるってのはどうなの!?

モテモテだね〜って?
いや、嬉しくないから!!
男に毎日毎日プレゼント貰ったって嬉しくないから!!

いや、嫌なのかって聞かれたら嫌じゃないけど、それとこれとは話が別!!

誕生日でも何でもないのに皆がプレゼント持ってくるから、オレの部屋プレゼントがギッシリなんだけど……。

誰から始まったのかは忘れたけど、最初の方は花とかだったかな?
毎日一人一本ずつ花を持って来てくれてたんだ。
それから理由はわかんないけど花束になって、お菓子(フルーツとかじゃなかった。お菓子だった。オレは子供扱いされてる様な気がした)になって貴金属になって……とエスカレートしていく内に、今日のプレゼントは車だった。

別に自分のお金で買ってきたのならまだいい。
でもね、これ買うのに使ってるの皆ボンゴレのお金なんだよね。

…なんの嫌がらせ?

ただでさえ無駄に出費しているというのに、更にお金を巻き上げていくとは恐るべき能力だ。

しかも愛人だの恋人だのへのプレゼントならまだ分かるよ?
なぜオレ?しかもなぜ毎日?

最近じゃあ傍観者だったクロームまでプレゼントを用意してくるようになった。今はまだクッキーとかだからいいが、他の守護者の後を追うようなことにはならないでほしい。


なんとか止めさせないと、このままではボンゴレは破産する。

だが止める方法などあるのだろうか?

何やら最近では1番高価なプレゼントを持ってきた奴が勝ち、みたいな雰囲気だし。
リボーンはリボーンで「守護者をまとめるのはボスの役目だぞ☆」と手をかしてくれない。

最善の手段が浮かばないまま、彼、沢田綱吉は目の前に広がる莫大なプレゼントを、ひたすら死んだ魚のような目で眺めていた。







あとがき

あれ?シリアスネタ書いてたはず……



雲の空耳と独り言+α

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