長編
□忠誠を
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開かれた扉の先は、とてつもなく広いパーティー会場だった。
使っていないはずなのに、隅々まで掃除が行き届いている。
光り輝くシャンデリアは豪華さを際立てていた。
きっと一般人が見たら、この広さと輝かしさに驚くだろう。
実際ツナも今あまりの驚きにワナワナと震えている。
だがツナが驚いた理由は、部屋の広さ、とかこのシャンデリアの値段とかいつの間に掃除したのだろうか?とかいう理由じゃない。
「な、何でこんな所に皆いんのおぉーーーーーーーーーーーーーー!!!!!?」
ツナがワナワナと震えていた理由は、シャンデリアより何より、まっ先に目に映ったニコニコ笑顔の人達が原因だ。
この部屋の広さにも負けず劣らずの人達で会場は埋めつくされている。
しかもそこにいたのがマフィア関係の人ならまだ冷静を保っていられたかもしれないが、ツナの目に映った中にはマフィアとは関係のない人までいた。
叫んでからピクリとも動かないツナを見て、とある少女二人がクスリと笑い合いツナの元へと歩く。
目をパチクリとさせてツナは二人を見た。
二人の少女、もとい女性は満面の笑みとともに、久しぶりに会えた彼の名を呼ぶ。
「ツッ君」
「ツナさん」
「「久しぶり(です)」」
「何で二人がここに!?」
「はひ?獄寺さんから聞いてないですか?」
二人の存在に驚いたツナが質問すると、逆に質問で返された。
ツナはどういう事?という目を獄寺に向ける。
すると、獄寺は目を反らして、しどろもどろする。
「いや、その…」
「なんだ、タコヘッド。自分から名乗りを挙げてやると言ったのではなかったのか?」
「うるせぇな芝生頭!!んな事言ったって、こんな事やれるわけねぇだろ!!」
隣から話しかけられ、なぜか顔を真っ赤にして言い返す獄寺。
すると、二人でガミガミと言い合いが始まった。
ツナは止めても無駄だと判断して、京子ちゃん達に事情を聞く事にする。
「せっかくハル達がシナリオで準備したのに、獄寺さん言わなかったんですね」
「シナリオ?」
ふと気になったツナは聞き返す。
「はい!!せっかく久しぶりにツナさんに会えるんだから、サプライズでツナさんをビックリさせようって京子ちゃんと話したんです!!」
「うん!だから二人でイロイロ話し合ったんだよね!」
ニコニコ笑い合い、二人は交互に話してくれた。
「元々お兄ちゃんにツナ君を連れて来てもらって、私達がイタリアに来てる事を伝えてもらうはずだったんだけど」
「獄寺さんがそれは右腕の俺の役目だって譲らないから、代わりにやってもらうはずだったんですけど」
そこまで聞いて、ツナはなぜ獄寺がハル達の事を言ってくれなかったのか不思議に思った。
別に今日ハル達が来てる事を伝えるぐらいなら、何の支障もないだろうに……
「もしかして原稿読めなかったとか?」
「やっぱりイタリア語への訳し方間違ってたんでしょうか?」
「その原稿っていうの、いちいちイタリア語で書いたの?」
「はい!!頑張ってハルがイタリア語に直したんですよ?」
エッヘン、という効果音が付きそうなぐらいに誇らしげにハルが言った。
そういえば、数日前届いた手紙を見て獄寺君が固まっていたような気もする…
もしかして、あの手紙がその原稿とやらだったのだろうか?
もし、そうだとしたら一体いつからそんな計画を立てていたのだろう。
あの手紙届いたのって、大分前だよ?
「それにしても、何でイタリア語で書いたの?獄寺君になら日本語でも大丈夫なのに」
「きききき気分の問題ですよ?深い意味はないんです!!」
ツナの質問に、ハルはさっきまでとは打って変わって慌てた様子だ。
その様子を見て京子ちゃんがクスクスと笑う。
「ホントはね、獄寺君に対抗したかったんだって」
「対抗?」
「きょ、京子ちゃん!!言わないって言ってたじゃないですか!!」
京子ちゃんがポツリと語りだすと、ハルが大きく手を振って京子とツナの間に割り込んできた。
するとツナは少し残念そうに、下を俯いて「教えてくれないんだ…」と呟く。
結局ハルが負けて、京子ちゃんがイロイロ教えてくれる。
なんでも、あまりにも獄寺がハルの事を「バカ女」だの何だのと言ってくるから、自分だって負けず劣らず賢いんだぞ、という挑発的な意味を込めてイタリア語で原稿を書いたらしい。