企画

□いない、もう、いない
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最後に聞いたのは守護者達が自分の名前を叫ぶ声

そして


「もう少し―――」


という声と、ニタリと笑ったヤツの顔









気づいた時には、時すでに遅しというやつだ

一瞬だった
瞬き一つだった
それだけで場面は瞬時に変わった

何が起こったのか分からなかった

パチリと目を開けたら真っ暗だった
一瞬目を開けているのか分からないほど真っ暗な世界

しかし驚いてもう一瞬きした時瞳に映し出された映像に
ああ、ちゃんと目を開けていたんだ、生きてるんだ
と安堵する反面
絶望を感じていた


「な、んで………」


目の前に広がる光景は、次々と仲間が倒されていく絶望の世界

苦痛に歪めた彼らの表情が、緊迫感が、アップで広がっていた


仲間を傷つける人物の目線で


「や、だ」


目の隅には淡いオレンジの炎と


「やだ……」


血に塗れた見慣れた自分の手が映り込む


「あ、ああぁぁ……」


あぁ
自分が
仲間を
傷つけている――!!


「ヤメロオオォォォオォ――――!!!!」


その映像をみたくなくて
現実から目を背けたくて
頭を抱えてしゃがみ込んだ

そんな俺に奴が囁く


「ほら、貴方が言ったんですよ?彼等を護ると」


「なのに、どういう事でしょうね?貴方はまったく逆の事をしている」


「貴方が
彼等を倒していく」


「貴方が、
彼等を傷つける」


「他の誰の手によるものでもない、貴方の手で」


「貴方のせいで」


「全部全部、貴方のせい」


「弱い弱い、貴方のせい」


「貴方がいなければ、彼等が傷つくこともなかったのに」


「貴方がいなければ、彼等は平和な日常にいられたのに」


「きっと貴方を怨んでいるでしょうね」


「アイツなんか死んじゃえばいいのにって」


「消えちゃえばいいのにって」


「ずっとずっと、信じてたのにって」


「彼等も可哀相ですね。貴方を信じてきたのに。裏切られて、傷つけられて」



「ホントに貴方はこの世にイラナイ存在です」


そっと耳元で語られる
聞きたくないのに
耳を塞いでも聞こえてくる声


あぁ、そうか
俺はイラナイんだ
死ななくちゃ
消えなくちゃいけない存在なんだ


俺なんて




「イラナイ」






『チェックメイト』



奴は欲しかったおもちゃを手に入れた小さな子供のように無邪気に笑った
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