MAINC[小説]
□Liner Rendezvous2(パラレル編…作者:たこすけ)
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「……」
「……あ、あの……」
「……」
「……す、すみません。すぐ、やり直します」
「……」
新しく部下になった沢田 綱吉を目の前に立たせている睨みのマネージャー・雲雀 恭弥。
自分は長い脚を組んで、背もたれにどっかりと寄り掛かっている。
もういいとも、早くやり直せとも、指示を出さない。
綱吉は小さくなって俯いている。
ヘビに睨まれたカエルとでもいえよう。いや、カエルというより、小リスかハムスターか。
回りの社員も固唾を呑んで様子をうかがっていた。
綱吉は営業からの依頼で、見積書と行程表の作成をした。マネージャーのサインをもらおうと、書類を持ってきたのだが……。
どうもミスをしたらしい。
らしいでなく、した。明らかに。
雲雀は目をそらし、やり直してと一言のみ告げた。
そして自分も仕事の続きをやり始める。
綱吉はやっと解放された。書類を持ち、トボトボと自分のデスクに向かう。
綱吉が雲雀マネージャーのチームへ異動になって、2週間たった。
異動と言ってもフロア内の隣のチーム。いわゆるスリッパ転勤である。
このフロアの仕事は営業が仮受注してきた案件の行程表を作成、見積、発注、工事の手配と、その後の管理を任される。
異動先の仕事内容は今までとさほど変わらない。
しかし対象が小口から中・大口ユーザーへなったので、動かす金額も大きいし、保守契約なども複雑になる。
綱吉の与えられた仕事は見積書の作成、発注だ。
しかしその見積の段階で間違ってしまったようだ。
大口用のフォーマットは小口のと勝手が違い、上手く使いこなせない。
任された案件は同期の営業マン・獄寺が仮受注してきたものだ。
同期のよしみで、期日もギリギリ待って貰っている。
しかし仕事にはケジメが必要だ。早めに仕上げて了解をもらいたい。
今日は残業になりそうだ。