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□2011X'mas Eve(現代編…作者:たこすけ)
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しんしんと雪が降る夕暮れ時―――、
並盛公園中央にある時計台は午後4時を知らせるチャイムが鳴り始めた。
今日はクリスマスイブ。
近くの商店街でも街灯にクリスマスの飾り付けがされて、ジングルベルの軽快な音楽も流れている。
クリスマスから年末へ向けてのかき入れ時もあり、非常に賑わっていた。
時計台付近は待ち合わせ場所として利用されているが、今の時期と時間帯では恋人を待っているものが多い。
群れすぎ……と思いつつも、恭弥も愛しい子を今か今かと待ちわびていた1人なので今日だけはガマンする事にした。
恭弥は少しだけ傘を傾けて空を見上げた。
灰色の重々しい雲に覆われていて、細かい粉雪が自分に舞い落ちてくる。
間もなくあたりは暗闇に包まれていくであろう。
はぁと自分の吐く息がまるで雪と溶け合っているようだ。
予報より積もりそうだなと思い、わずかだが傘に積もった雪を内側から指でポンとはねのける。
約束の時間より15分ほど過ぎた。
恭弥は時計台と自分の時計を交互に見ながら心配になってきた。
遅い……、あの子、アクシデントに出くわしてなければいいけど……。
何かと絡まれやすい子である。
中性的でその辺の女の子よりずっと可愛らしいのに、それに関してはまるで無自覚だから手に負えない。
傘を差していても舞ってくる雪が恭弥の黒のロングコートにつく。
時折手でぱっぱっと払った。
「やっぱり迎えに行けば良かったかな」
腕時計をしている方の手袋をはめ直しながら呟く。
しばらくするとサクサクと新雪を踏む音が聞こえてきた。
「ヒバリさん……」
振り返ると走ってきたのか、はぁはぁと息を切らしながらもニコリと笑う綱吉がいた。
ショート丈のダッフルコートに、ファーがついたフードをかぶっている。
「ご、ごめんなさい、遅れてしまって……」
「この僕を待たせるなんて君だけだよ」
「……すみません」
寒い中待たせるし、心配はさせるし、少しだけ困らせようとしたが、
しょんぼり俯いている彼を見ると大抵は恭弥から折れてしまう。
「冗談だよ。君こそ走って滑りでもしたら危ないよ。
携帯に連絡してくれれば良かったのに」
さほど怒ってないのが判ると綱吉はエヘヘとバツが悪そうに笑う。
そんな彼のフードをかぶった頭をポンポンと撫でる。
「傘、差してこなかったんだ」
傘に入れてやると
「はい、差しながらだと速く走れないし、雪だからいいかなって……」
と、答えながら小さな肩がまだ上下に動いている。
冷たい風にさらされて彼の鼻も頬も真っ赤になっていた。
「ダメだよ。雪でも結局ぬれてしまうよ」
恭弥は手袋をはずしてそっと頬に触れた。
「冷たい」
「ヒバリさん?」
綱吉の琥珀色の瞳に恭弥が映し出される。
そう、僕だけでいい……。君の瞳に映っているのは。
恭弥はそれに満足すると唇を重ねようと顔を近付けてきた。