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□たった一つの願い
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しばらく、おもいふけっているとドアの開く音が聞こえた。
そこには、思ったとおりナツがいた。

俺が目を覚ましてから、一週間がたつ。
その間、ナツは毎日決まった時間に、この場所に来た。

「よぉ、ナツ。また、今日もきたのか」

グレイはケラケラと笑いながら、ナツに話しかける。
ナツは表面上では笑っていたけど、まだ少し疲れているようだった。

「今日もクエストやんなかったのかよ。
 いい加減仕事しないと金なくなるぜ?」

しかし、その言葉に反応せず、ただナツは黙って椅子に座った。
その様子を見て、グレイは少し考える。

多分、コイツは俺がこうなってしまったのを
少なくとも自分のせいだと感じてる。
自分がちゃんとしてれば、って思ってるはずだ
たとえ、俺がどれだけ「気にするな」と言っても、コイツは気にするだろうな
それに、俺の記憶が戻っても、俺に無茶をさせまいと
コイツが無茶し出す。
それだけは、避けたい。

コイツのことをちゃんと理解するには、コイツとの関係をしらなきゃな

そして、さっき一人でつぶやいたことを
今度は本人に告げた。


「なぁ、ナツ・・・
 オマエは俺のなんなんだ?」

また、ナツの顔が歪む。
あの日と同じだ。
この質問をするたびに、ナツは泣きそうな顔をする。

しかし、それをグレイにも自分自身にも隠そうとしているのか、
分かりきっているはずなのに、ナツはもう一度自分の中で質問を繰り返す。

「何って・・・」

「俺とオマエの関係だよ」

「そりゃ、俺のライバルでギルドの仲間で・・それから・・・」

そこから、ナツは言葉を止めてしまった。
そこで本当のことを言ってもよかった。
しかし、いくら一週間たち、平静を取り戻していても、
この事実を言っていいのか迷ったのだ。

”恋人”

という紛れも無い真実を
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