黒嶋学園高等部

□駄目犬×子犬
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暖かい5月の昼下がり。
何時ものように、発熱して来た僕は保健室にいた。
保健室は無人で僕は勝手に熱を測り始める。
1年以上通っているので慣れたものだ。

ガラッと音がして、保険医が保健室に入って来た。
「……瑞希」

入ってきた彼は夏木浩一。
真っ黒で少しクセのある髪の20代終盤の男。

そして一応僕の、コイビト、だ。


こうなったのは1年前、入学式までさかのぼる。

僕は生まれつき体が弱く、すぐに熱を出したり風邪を引いたりする。

その日も例に漏れず、高校という新しい環境に慣れずに熱を出した。
仕方がないので保健室に薬を貰いに行くことにした。
フラフラと歩きながら右も左も解らない状態の校舎を歩き回り、ようやく辿り着いた。
だが、保健室に入るなり僕は倒れこんで、転びそうになってしまった。

ふっと、体が何か暖かいものに包まれた。
そこでようやく自分が転んでないことに気が付いた。
「大丈夫か、おい」

色っぽい声だと思いながら顔を、あげた。

その瞬間。
見とれてしまったんだ、彼に。

艶っぽい目元に。
セクシーな口元。
彼のぬくもりや腕の中の心地よさ。
何もかも、に。



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