ヴァリアーライフ
□6
2ページ/3ページ
部屋を抜け出してから数分。今更だが、自分は何の武器も持たずにヴァリアーの基地内を歩き回っている。
流石に心細い。というか、どう考えても自分が馬鹿だったとしか思えない。
勿論ちゃんと武器(三叉の槍)を持ってはいた、あの部屋までは。なのに仮にも暗殺者である自分が焦っていてその得物を置き忘れてくるなんて。挙句今の今まで存在すら忘れていた。
情けないにも程がある。
かと言って、またあの部屋まで取りに戻るのも危険だし。
確かに幻術は使える。だけどそれにばっかり頼ってもいられないのだ、私は。
『はぁ……』
思わずため息をつくと、今まさに私の横を通り過ぎていった隊員が、ばっとこちらを振り返った。
やばい。
「?」
その隊員は少し私の顔を見つめた後、不思議そうに首を傾げてまた何処かへと歩いていった。
よかった、危ない危ない。
気付かれたのかと――
「………おい、」
ふいに後ろから聞こえたドスの効いた低い声。
振り返ると、そこには何とも人相の悪いお兄さんがいつの間に………って、ちょっと待った。
今ここにはそのお兄さんと私しかいないんだけど、もしかしてその声は私に向かってかけられたのでしょうか。
「そこのてめぇだ。そんなもんで俺の目が誤魔化せられるとでも思ってんのか、ドカスが」
何だか普通にバレてる。嘘だと言ってくれ。
「てめぇみたいなガキが何処から入り込みやがった」
人相の悪いお兄さんは私を睨み付けて一歩ずつこちらに近付いてきた。私はそれに気圧されて自然とじりじり後退る。
質問には正直に答えようか。
『ガキじゃありませんし、入り込んだわけでもありません。どちらかというと拉致られてきました』
「ハッ」
鼻で笑われた。ですよね。
「ここで俺が始末してやる」
出会って数分で死刑宣告。何なのこの人怖すぎる………って、暗殺者にとっちゃそんなの極普通のことか。
構えられたのは二丁の銃。その銃が、周りの光を集めているかのように光り始める。
……いや違う。手から光を吸収している、の方が正しいかもしれない。上手く表現出来ないのだけど。
とりあえず危ない匂いがぷんぷんする。
逃げよう。
『………っ!!』
そう判断した瞬間、自分でも驚く程素早く踵を返して走り出していた。
幸いすぐ曲がり角だったので、取り敢えず銃弾の軌道から外れるため転がり込むように右の通路へ。
次の瞬間、
――ドゴォンッ
何故か後ろで大爆発が起こった。
『…………』
銃ってなんだっけ。そもそもあの兵器は銃なのか。
ちょっとよく分からない。取り敢えず逃げるけど、きっと今の私の隣にはぴったりと死神がくっついているんだろう。