ヴァリアーライフ
□3
2ページ/5ページ
『宜しく頼みますよ』
「ピ!」
ぱたぱたぱた。
青と白の空に、忙しく羽ばたく黄色い毛玉もとい鳥が飛び込んでいく。あんな体型でも本当に飛べるもんなんだ。
それをちゃんと見送って、ベランダから部屋の中に入る。
………なんか疲れたから、少し昼寝でもしよっかな。
そのままぱたんとベットに突っ伏した。
*
――ダダダダダッ
………何の音だ。
――バンッ
「アラン君っ!俺のトランク貸してあげるから今すぐ荷造りして!」
は?
『ちょ、いきなり何です?荷造りって』
慌てて起き上がってベットから降りる。
騒々しい音を立てて扉が開いたと思ったら、僕の部屋にずかずかと入ってきたクロカミさん。後ろには銀色の大きいトランクを引きずっている。フローリングに傷がつきますけど。
「寝ぼけてる場合じゃないんだって!あいつが来ちゃうから!」
え、いや………え?本当に何なんだ。あいつって誰だよ。
寝起きで頭が回らないせいもあって、プチパニックな僕を余所にクロカミさんはご丁寧にも床の上にそのトランクを広げてくれている。
「えーと、着替えとか必需品?まぁ大抵の物はあっちで用意してくれると思うよ」
着替えとか、あっちで用意してくれるとか、僕は何処かにお泊まりでもしにいかにゃならんのですか。
あ、もしかしてこれが〈頼み事〉ってやつか?
『あ、の……クロカミさん。全く状況が読めていないんですけど、これから私は何処かに行かなくてはいけないんですか?』
勢いに押されてとりあえず洋服ダンスの前に行ったはものの、どんな服を入れればいいのかさっぱり分からない。
「ん?ひとまず服はそん中の全部持ってけば?いつここに帰ってこれるか分からないし」
『いやあの、全部は流石に無理だと思うんd「頑張れば入る!」え、あ、はい』
突進して来たクロカミさんを慌てて避ける。
そしてクロカミさんはタンスを開けると中から腕いっぱいに服を取り出して、それを無造作にバサッとトランクに放り込んだ。
『ちょっ、何するんですか!折角ちゃんと綺麗なのにぐしゃぐしゃになってしまうでしょう!?』
後ろで悲鳴じみた声を上げる私を、クロカミさんはあまり気にせず次々服を放り込んでいく。
とどんどん棚の中が空になっていって、本当に全部トランクの中に入れられてしまった。そこまで多いわけでもないが、決して少ないわけでもないのに。
「お、もしかしたら本当に全部入っ………た、うん」
………うん、とか言ってるけどかなり無理してるよ。ああもう絶対中でしわくちゃになってる!
「あれ、というか結局服だけしか入んなかったけど、他に持っていく物なさそうだからいいよね?」
かなり頑張ってトランクのチャックを閉め終わったクロカミさんが、ふぅとため息をつきながらその上に座って僕に言った。
『だから!いいも何も、今だにどういう事情なのか分からないというか説明されていないのですが』
流石にイラッときて語尾をキツくする私に、クロカミさんは目を丸くしてきょとんと首を傾げた。可愛くな………くもないんだけど。
「あれ、言わなかったっけ」
にっこ。クロカミさんが笑って口を開いた。
「急で悪いんだけどアラン君は今日から
――ガンガンッ バキバキ メキョ
…………ん?」
『!!?』