ヴァリアーライフ
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『疲れましたね………』
ただ外出しただけなのに、色んな所で色んな人に絡まれて疲れた。
それもこれも全部、クロカミさんの下についてるからだ。
「お、アラン君。買い物帰り?お疲れさまー」
噂をすれば何とやら。私の姿を見たクロカミさんがぶんぶん手を振って走って来た。
というかクロカミさんが普通の時間に外出してるなんて珍しい。前に言ったようにこの人は基本引きこもりだから。
「友達とお昼ご飯食べてきたんだ。美味しかった!」
『おや、クロカミさんにお友達なんていたんですか?』
ただの依頼人とかクロカミさんに恨みを持っている人とかなら分かるんだけど。
というかそれぐらいしか知らないんだけど。
「何それ酷い………」
むくれるクロカミさんにくふふと笑って家の鍵が開けられるのを石段の下で待つ。
と、何もしていないのにクロカミさんが引いただけでドアが開いた。
「ん!?あれ、鍵開いてる。やっべそういえば出る時閉め忘れてた」
何してんだ。
『………クロカミさん。貴方の部屋に空き巣入ろうと何だろうと問題はありませんが、ルームシェアの私達にまで迷惑が掛かるとなれば別ですよ』
私が下から睨み付けながら言うと、こちらを振り返ったクロカミさんは頼りなーく笑った。
「まぁ大丈夫でしょ、あっはは、は」
クロカミさんに大丈夫と言われると物凄く不安になるのは何故だろう。
『………まぁいいですけど、取り敢えず止まってないで早く中に入って下さい。何時まで私をここに立たせている気ですか?荷物が重いんですよ』
両手で持った紙袋を左右にぶらぶら振る。
「何その紙袋。本?」
『パイナップルです』
しかも丸々一個だ。
「鳳凰果実?何でまたそんなもん買ったの。余ったら後で分けてねー」
ほうお………なんかいきなり日本語が混ざったんだけど。そういえばクロカミさんは生粋のジャッポネーゼなんだっけか。
『余ったらですよ』
流石に全部は食べられないだろうけど、一応釘を刺しておいた。
「わぁかってるって。お先にどうぞ」
クロカミさんがドアを開けてくれているので、先に中に入る。
というか、もし本当に誰かがいて入った途端襲われてもいいようにだ。
『全く人使いが荒いですね………大丈夫ですよ』
荒らされているような形跡は無く誰も入ってはいないように見える。あくまでも共同スペースだけの話だが。
全く、ここは普通に住んでるだけでも危険なんだから鍵の掛け忘れとか本当に勘弁してほしい。
「本当?良かった良かった」
クロカミさんの至って呑気な声を後ろに聞きながら階段を上り、自分の部屋の前に来る。
ちなみに一階は共同スペースとクロカミさんの部屋、二階はルームシェア用の部屋が4つある。結構広い。
誰か中にいるかもしれないので、一応確認の為にドアノブを回そうとしたが鍵が掛かっているので回らなかった。
安心して鍵を開けて中に入る。
ぱたんとドアを閉めて振り返った
「クフフ………鍵もかけていないとは不用心な家ですねぇ」
ら。
『なんかいる……!!』
「なんかとは何ですか、失礼ですね」
これは驚き、喋るパイナップルです。