私のこと好き?/剛
***



「私のこと好き?」


台本熟読中の剛。
その分厚い台本は片時も離れず剛の心を離さない。
その背中に寄りかかるようにして私は体育座り。
背中合わせのせいで表情は分からないけれど、ぎゅっと握られた手に心がほっと息をつく。


「…どうしたの?」
「ん…ちょっとね…台本に嫉妬しちゃいました」


そう返せば、返事の代わりに小さな笑い声。
握られた手にぎゅっと力が込められてあっという間に対面する形になった私たち。
顔色を伺うように顔を覗き込めばにんまりと笑う剛の顔がそこにはあった。


「嫉妬しちゃったの?」
「しちゃいました」
「台本に?」
「うん、そう」
「はは!うれしー」


剛は笑って私を優しく抱きしめてくれた。


「好きだからね」
「うん」
「だから嫉妬なんて必要ないない」
「う、ん」


そっと体を離されて、今度は優しくキス。


「でも嬉しかったから、たまには嫉妬してね」


照れくさそうにはにかむ顔に痛いくらい胸が高鳴った。




next...shingo






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