忍たま 短編
□ぎゅっとしてハニー!
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「おはよう、2人とも」
「おはよう!…ってあれ?桃、なんでここにいるの?」
「おはようございます!」
「はい、おはよう」
元気いっぱいあいさつをする桃の頭を、兵助がなでる。
雷蔵がこれまでのいきさつを話すと、2人はおかしそうに笑い出した。
「そりゃあ三郎だって動くな!」
「だって桃ちゃんだっこするとあったかいもんね!」
「…おい、ちょっと待て」
「ん?なにハチ?」
勘右衛門が首をかしげると、竹谷はものすごい形相で彼を指さした。
「なんでお前、桃があったけぇってこと知ってんだよ!?」
「え?なんでって、いっつも抱っこしてるもの」
「「「はあああっ!?」」」
「…ってあれ?三郎いつの間に」
いつの間にか制服に着替えて出てきていた三郎に気付いた雷蔵は、さほど驚いた様子も見せず振り返った。
「今出てきた」
「はやっ!!」
「桃に会うためなら、着替えの1つや2つ…ってそんなことよりもっ!!勘右衛門、お前私の知らないところでっ…!!」
「何言ってんの。いつもお前がひまだからって桃を呼ぶくせに、庄左ヱ門とか彦四郎の勉強見てるから俺が桃と大人しく待ってるんでしょ。ね?」
「はいです」
「ちくしょう…!頼られることがこんな形であだとなるなんて!じゃあ今日の委員会の時は、お前が庄左ヱ門たちに勉強教えてやれよ!?私、桃とお話してる!」
「えぇーっ!!やだよ!俺が桃とお話してるー!」
「お前ら仕事をしろおおおっ!!」
「まぁまぁ、ハチ落ち着けって」
学級委員コンビにツッコミを入れた竹谷を兵助がなだめる。
その間に、雷蔵が桃に話しかけた。
「ところで桃ちゃん、どうして五年生長屋に来たの?」
「あの…その…」
雷蔵の質問に桃は急に“もじもじ”とし始め、少しして上目遣いに“ちらっ”と勘右衛門を見上げた。
「その…今朝は寒かったので、尾浜先輩にぎゅってしてほしくて…」
「え?お、俺っ!?」
「「なんで勘右衛門なわけっ!?」」
いつの間にか騒ぎはおさまっており、話を聞いていた勘右衛門は顔を赤くして驚き、三郎と竹谷と兵助は“ぎょっ”と目を見開いた。
すると桃は、はにかんだ笑顔を見せて頭をかいた。
「尾浜先輩、とってもあったかくて抱っこされると安心するんです」
「何それっ!?私はっ!?」
三郎が問い詰めるように桃に迫ると、桃は驚いた顔をしてあわてたように腕を“ぱたぱた”と動かした。
「は、鉢屋先輩は普通ですぅ!」
「普通って何っ!?あったかいの!?冷たいの!?」
「あの、その、んとっ…!」
桃は困った顔で周囲を見渡すと、何を思ったのか兵助を見ていきなり彼に抱きついた。
「「「「!?」」」」
「えっ!?ちょ、桃っ…!」
「久々知先輩よりはあったかいです!」
「「「「「…は?」」」」」
真剣な顔で言い張る桃に、5人は“ぽかん”とした。
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