忍たま 長編

□苦労人はつらいのだ
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その日の午後は授業もなく、桃は1人、学園内を散歩していた。


(午前中は大変なことだらけでしたが、午後はのんびりしたいですねー)


そんなことをのんきに考えながら、ゆったりと歩く桃。

春の日差しは変わることなく、やわらかく降り注いでいた。


(…気を抜くと、学園の中で迷子になっちゃいそうですね)


広い学園内は、まだ来たばかりの桃にとっては迷路と同じ。

桃は色々覚えておこうと、周りを“キョロキョロ”しながら校舎の角を曲がった。

すると…















“ドンッ!!”















「「わあっ!!」」


同じく角を曲がってきた誰かにぶつかり、桃はあわてて顔を上げた。

そこには、赤みがかった茶色の髪で、萌黄色の制服に身を包んだ少年が、目を丸くして立っていた。


「だ、大丈夫かっ!?」

「え?は、はいです!」

「悪ぃな!よそ見してて、前見てなかったから…」

「わたしも前を見てませんでした。すみません」


“ぺこり”と頭を下げると、少年は“にかっ”と笑って親指をつきだした。


「お互い様ってことだな。じゃあ、おあいこだっ!」

(…この人、いい人です)


桃が、思わず少年をまじまじと見つめていると、少年は困ったような顔をして頭をかいた。


「…おれの顔、何かついてるか?」

「あ、いえ!何でもないです」

「そうか…って!こんなことしてる場合じゃねぇっ!!あいつら探さねぇとっ…!!」


“ばっ!”と手を下ろし、真剣な表情になった少年を見て、桃は首をかしげた。


「誰かいなくなってしまったのですか?」

「ん?あぁ、ちょっと方向音痴が2人いてな…」


“ハァ…”とため息をつく少年を、桃は心配そうに見上げた。


「あの…よかったらお手伝いします」

「ほ、本当かっ!?そいつは助かるぜっ!!じゃあ、着いてきてくれ」


桃の言葉に目を輝かせて、少年はうれしそうに笑いながら歩き出した。

桃もあわてて、彼の隣に立って歩き出した。


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