忍たま 長編
□偶然の再会
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「あ、団蔵おはよう!」
「桃、おはよう!」
桃が長屋に戻ると、部屋の前に団蔵が立っていた。
「早起きだね。どこ行ってたの?」
「ちょっとお散歩です。団蔵は?」
「今、桃を呼びに来たんだ。朝ごはんに行こうって」
それを聞くと、桃は“パァッ”と顔を輝かせた。
「一緒に行ってもいいのですかっ!?」
「当たり前だよ!友達だろ?」
団蔵が笑うと、桃もうれしそうに笑った。
「そういえば…」
食堂へと続く廊下の途中で、桃は団蔵に顔を向けた。
「団蔵、昨日先輩にわたしのことを話したですね?」
「えっ?何で知ってんの!?」
「さっきお散歩してた時に会ったのです。それで、お名前を知りたいのですよ」
「名前?えーと、どんな先輩?」
団蔵が聞くと、桃は“うーん”とうなって腕を組んだ。
「手があったかくて、優しい先輩です」
「や、優しいっ!?(そんな先輩、いたっけっか?)」
団蔵は顔をしかめて、首をかしげた。
「桃、他には?外見とかさ」
「えっと…深緑色の制服を着てて、くないを頭につけてて…確か、“ギンギーンッ!”て叫んでたです」
「……」
桃の説明を聞いた団蔵は、顔を青ざめて固まった。
「…桃、その先輩ね、『潮江文次郎』先輩っていうんだ…」
「潮江先輩というですか!優しい先輩をもっているのですね、団蔵は」
「え…あ、あのね、桃…」
ほのぼのとした笑顔で“優しい”と言う桃に、団蔵は顔を引きつらせた。
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